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本当に不思議な世界の風習
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雑学
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vol.10 背中にワニのウロコを彫って強くなる セピック族の「ワニ信仰」

『本当に不思議な世界の風習』
[編]世界の文化研究会 [発行]彩図社


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  セピック川流域に暮らす民族



 ニューギニア島には、セピック川という大河が流れている。


 その流域には村落が点々と存在しており、それぞれ文化が細かく異なる民族が暮らしているが、彼らは総称して、「セピック族」と呼ばれている。


 中には雨季の増水に備え、2メートル近い高床の住居で暮らす地域もあるが、それでもセピック族はカヌーを利用するなどして、自然と共存する生活を営んでいる。


 これは、彼らが山や川、森、動物などを崇める独特の「精霊信仰」を持っており、自然界のすべてに霊が宿ると信じているためだ。


 同じパプア・ニューギニアでも、都市部では多くが敬虔なクリスチャンであるが、ジャングルに暮らすセピック族のような少数民族は、今なお精霊を信仰し、それに沿った生活を送っているのである。



  ワニの模様を彫る儀式



 そんなセピック族の中には、ワニを守り神として崇め、自分たちの祖先はワニだと信じている部族がいるが、彼らが行う「男子の成人の儀式」は壮絶だ。


 それは、「偉大なるワニの強さを体に取り入れる」ため、背中を中心にワニの模様を彫るというものなのである。


 具体的な流れは以下の通りだ。


 まず、集落の長がデザインした通りに背中をカミソリで傷つける


 そして、この傷口に特殊な樹液を塗りこみ膨らませ、最終的にワニのウロコのような模様に仕上げるのだ。




 聞いただけでゾッとするような話だが、実際、傷からにじみ出た血を水で洗い流す際の激痛は凄まじいようで、気絶、嘔吐、失禁なども当たり前で、痛みのあまり執刀中に逃げ出そうとする者も多いという。


 この過程での流血は、彼らにとって「母親から受け継いだ女の血をすべて流す」という意味があり、儀式を終えて初めて「男になる」と信じられている。


 とはいえ、止血もしないので、障害が残ったり、ショックや出血多量で死亡する例もある。成人になるには相当の覚悟がいるのだ。


 傷を彫り終わった後も、ウロコ模様の部分が化膿し、何日もの間激痛は続く。さらに、1ヶ所に体重がかかれば傷が潰れて綺麗に仕上がらないため、寝るのにも神経を使うという。


 これら種々の苦難を乗り越え、2ヶ月ほどが経つと、肌はワニの皮膚のようなウロコ模様になる。


 こうしてようやく、男たちは成人し、「クロコダイルマン」として認められるのだ。



  ハウスタンバラン



 ワニの模様を彫る成人の儀式は、村の中心に建てられた「ハウスタンバラン」という場所で行われる。


 ハウスタンバランは「精霊の家」を意味する、非常に神聖な祭祀用の家である。


 そんなハウスタンバランは、建物自体が「女性」を、室内は「胎内」を象徴していると言われる。


 この中で成人の儀式を行い、そこから出ていくことによって、男子は大人の男として「再び生まれる」のだという。


 儀式を行うのはおおよそ1418歳の男子たちで、彼らはまず、ハウスタンバランの2階に集められる。


 最初の2週間、全身に泥を塗った彼らは長老たちから「村の掟」を学ぶ。


 それが終わると、いよいよワニ模様彫りを行うのである。


 模様を彫った後の数ヶ月間は、さらに長老たちから「部族の歴史や掟」「家族を養っていくための知恵」を教わる。


 すなわち、彼らは約半年という長期にわたって、ハウスタンバランの中にこもるというわけだ。


 そのため、ハウスタンバランは、男たちが家族や村を守っていくべき術を伝え守っていくための教育機関のような役割を持っているとも言える。




 その後、無事にハウスタンバランを「卒業」した男たちは、サゴヤシというヤシの木の一種を切り倒す任務を与えられるが、これは成人の男のみに認められた、とても重要な仕事なのである。


 なお、地元民にとってハウスタンバランは、通常女人禁制の場所でもある。



  セピック・アート



 現在、セピック族のこうした文化は「セピック・アート」として注目を集めており、セピック川流域はプリミティブ・アート(未開民族の造形芸術)の宝庫として、世界的に有名になっている。


 そのため、セピック族の村を訪れる研究者や観光客も増加しているという。


 実際、魔除けや呪術の意味を持つ仮面、また、神話の一場面や村の生活を彫刻で木の板に表現したストーリーボードなどは、見ているだけでも華やかで楽しい。




 そして、国外持ち出し禁止のものなど、最も神聖かつ貴重な作品が納められている場所もまた、ハウスタンバランなのである。


 ちなみに、こうしたハウスタンバランは、それ自体もアートであり、精霊の像や厳しい顔をした木彫りの男性像が施されるなど、素晴らしい内装になっている。



  セピック族と日本人



 そんな中、ワニを信仰している集落のアートは、当然ながらワニがモチーフとなったものが中心となっており、カヌーの()(さき)や種々の民芸品など、あらゆるところにワニが彫り込まれている。


 我々日本人からしてみれば、体をはじめとして、何にでもワニを彫ってしまうほど熱心なワニ信仰は、一見、異様なものに思えるかもしれない。


 しかし、日本でも稲荷明神のキツネのように、動物と神との関わりは色濃く残っている。


 また、日本の神道のもとを辿れば、あらゆるものに神や精霊が宿るという「自然崇拝」という考えに行き着く。


 そう考えれば、精霊信仰に基づいたセピック族男性のワニの模様やワニをモチーフにしたアートも、どことなく親近感を持って見られるのではないだろうか。


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