『吉本せいと林正之助 愛と勇気の言葉』
[著]坂本優二
[発行]イースト・プレス
吉本は芸人さんの
持っている「何か」を
売っているんだす。
それを見つけ出すのが、
わてらの勘どころや。
参考『吉本興業の正体』(草思社)
「落ちこぼれの更生施設」
かつて吉本興業は、大阪でこのように呼ばれていました。
いうことを聞かない子どもには、「あんた、そんなんだと、将来、吉本しかいくとこないで!」と、こぞって親たちが口にしていた時期もありました。
勉強のできない子、学校に通っていない子、不良と呼ばれている子。吉本はあえて、社会の枠からはみ出てしまった若者を集めました。その結果、世間の常識にとらわれない、強い個性を持ったタレントを数多く抱えることになったのです。
人は誰もが、隠れた才能や価値を持っています。それを石のまま放っておくか、あるいは磨き上げてダイヤモンドにするか。活かすも殺すも、まわりの大人たちしだいです。
埋もれた才能を見抜き、磨き上げる。そして、磨き上げた才能をどんな形で世の中に提供するか、戦略を立てる。
それが自分たちの使命であることを、せいは伝えているのです。
相手の「いいところ」に目を向ける
どてらいことを
やったる。
参考『大衆娯楽雑誌 ヨシモト』(吉本興業)など
せいは創業者として、「どてらいことをやったる」という強い意志があったようです。要するに、「誰も思いつかないような大きなことをやる」という意味です。
会社でもなんでも、組織というのはトップの器の大きさしだいで、どこまで成長できるかが決まってくるもの。
吉本が、日本を代表するエンターテインメント企業へと成長した理由のひとつには、「誰も思いつかないような大きなことをやる」という、せいの器の大きさがあったことは間違いありません。
生来、男勝りの性格だったせい。彼女の下で働いていた弟の正之助も、この気の強さとスケールの大きさには、一目置いていたといいます。