『「安らぎ」と「焦り」の心理(大和出版)』
[著]加藤諦三
[発行]PHP研究所
人づき合いがうまくいかない本当の理由
神経症になったある人の例である。その人の両親は立派なことをいっていた。家庭の大切さを説き、子どものために自分たちは生きてきたと述べ、子ども中心の家庭生活を主張していた。そして、子どもをおいて夫婦二人で出かける家庭を見ると、猛烈に非難した。自分たちはいかに立派で、彼らがいかに利己主義であるかを、えんえんといいまくった。そして自分の長男のお嫁さんをしきりに利己主義と非難した。神経症になった人は次男である。
ところが、その両親は長男のところの子ども、つまり孫がひきつけを起こして、生きるか死ぬかという大騒ぎの時、平気で買いものに出かけてしまった。「あれでは孫が可哀そう」とそれまでなにかにつけて長男夫婦をけなしていたのは、決して孫に対する愛情からではないのである。