実は、「ありのままの自分」を否定したり、隠したりしながら生きている人は、困難を乗り越える力(SOC)が低いという結果が得られている。
私が旧ユーゴ紛争の生存者研究をしてきたことは、ここで何度も触れているが、この戦争は民族紛争である。今までユーゴスラビア社会主義連邦共和国という一つの国に、ユーゴスラビア人として住んでいた国民がいきなり、国ができる前の民族にさかのぼって、つまりクロアチア人、セルビア人、ムスリム、と民族別に分かれたうえで対戦したわけなので、当然、一つの国だった頃に、それらの各民族の男女が愛し合い、子どもを生むこともあった。そうした子どもたちは、戦争が起こるまでは、皆と同じ「ユーゴスラビア人」だったのに、戦争が勃発してから、いきなり、「混血」と呼ばれるようになり、ひどい差別や嫌がらせを、所属している民族の人々からも、所属していない民族の人々からも受けてしまう、つまりほとんどの人からつまはじきにされることになったのである。