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なぜ宇宙人は地球に来ない? 笑う超常現象入門
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宇宙人

『なぜ宇宙人は地球に来ない? 笑う超常現象入門』
[著]松尾貴史 [画]しりあがり寿 [発行]PHP研究所


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いたとしても地球には来ない

「宇宙人はいるのか?」

 この疑問に関して、私達地球人は、アメリカ・アイダホ州の消防設備供給会社の経営者ケネス・アーノルドによる「空飛ぶ円盤目撃証言」以来、何と六十年以上にもわたって論争を続けている。

 この時彼が、「ソーサー(皿、円盤)等を水面に投げた時、水の表面に何度も弾かれる飛び方」に物体の動きを喩えたところ、話を聞いた新聞記者が勘違いをして、「円盤の形をした物が飛んでいた」と書いたのが、「空飛ぶ円盤」という勘違い語の発端である。実際にアーノルドが見たのは、軍事的に機密の対象だったステルス型爆撃機か、その年に打ち上げられた観測気球か。もちろん幻覚か、別の人工物の見間違いか、それとも何かの自然現象かもしれない。ともかく、それが「宇宙人の仕業(しわざ)」であるとする根拠も必然も全くない。
「宇宙人」の発想には大きく分けて二通りがある。一つは、天体物理学や生物学、進化論等を総合的に照らし合わせて知的生命体の存在を考えるもの。もう一つがカルト宗教の教義の延長線上の「エイリアンは地球にやってきている」(一連の「UFO」目撃騒動もこれに含まれる)という、妄想に近い荒唐無稽(こうとうむけい)な思いである。後者は、五十年どころか二百年も前に、神秘思想家スウェーデンボルクが、太陽系内に住んでいる宇宙人達と交信して(何という夢のある話か!)、信者を集めたという。そして彼らは教会を造り、現在までその宗教的活動は続いている。この両者の間にある境界線が非常に曖昧(あいまい)で、洒落(しやれ)ではないが、「グレイゾーン」が広すぎるのだ。
「宇宙人は地球に来ている」的書物や矢追純一氏らの「UFO」番組等では、宇宙人はすでに地球に来ており、その「事実」をNASAは隠蔽(いんぺい)していると、すこぶる被害妄想的な内容とともに、一見科学的な語句や映像、○○博士、○○教授、元NASA職員、元CIA構成員といった怪しげな肩書きを持つ人物の「解説」や「証言」が散りばめられ、もっともらしく放送の電波に乗り、もっともらしく書店に並ぶ。一般の読者や視聴者は、「真面目な本」のふりをした体裁やドキュメンタリー風に見えるまことしやかな演出に触れて、そこにあるでたらめな情報に批判精神や合理的思考・検証を持ち込むことなく、いとも簡単に信じ込んでしまうことが多い。

 特に、公的な場で与えられた情報に対して私達は無防備だ。小学校から大学まで、ブロイラーが餌を食わされるかのように与えつづけられた情報を、疑わず、考えず、ただ覚え込むだけの学習をしてきたことも、その傾向を強める原因になっているのかもしれない。私の周囲にも「宇宙人が空飛ぶ円盤に乗って地球に来ている」と信じている人達の、何と多いことか。

 UFO宇宙人論者がなぜか目の(かたき)にしているアメリカ航空宇宙局・NASAのインターネット・ホームページには、FAQ(ありふれた質問とそれへの解答)を設けている。翻訳ソフトを使って日本語で読んだら、「宇宙人は地球にいるか」の「エイリアン」という言葉を、ソフトが勝手に「外国人は地球にいるか」と訳してくれた。そりゃいるだろう。ひょっとするとこれも陰謀かもしれない?

 地球外の知的生命体のすむ星の数を計算してくれた親切な物理学者は意外と多い。星の数ほどいるだろう。「ゼロから八万個」という人もいれば、「二〇万個」という人もいる。生化学者でSF作家のアイザック・アジモフ博士は銀河系内で「二一個」と見積もった。

 天文学者のフランク・ドレイク博士は、カール・セーガン博士とともに、「銀河系内の知的文明の数を計算する式」というものを考えた。いわゆるドレイク方程式、ドレイクの公式と呼ばれているものだ。すなわち、「毎年誕生する恒星の数×惑星を持つ恒星の割合×生命の発生に適した惑星の割合×その惑星の中で生命が発生し得る割合×知的生命が発生し得る割合×高度文明になる割合×その文明の寿命=銀河系内知的文明数」だという。

 いずれにせよ、すぐ隣の知的文明星までは、何百光年から何万光年の距離、ということになるようだ。光の速さで飛んで何百年も何万年もかかる。滅茶苦茶に進んだ文明を持っている知的生命がいて、光の十分の一までスピードを出せる乗り物を持っていたとしても、誰が好きこのんで、自分達の最高技術を駆使して、何千年も何万年もかけて、彼らにしてみれば「未開の地球人」などに会いにくるものか。ついでに牛の死体を切って血を抜いたり、麦畑を丸く踏み倒したりしながら……。

 ちなみに、地球人が持っている一番速い乗り物は、光の速さの一万分の一のスピードである。私達は、とてもじゃないが、「隣人」には会えそうにないようだ。万が一、いや、億、兆、京が一、すぐ近所(?)に地球外生命が宿る可能性のある星があっても、文明が栄えるタイミングが地球人のそれと重なる可能性はほとんどないだろう。例えば、地球の誕生から現在までの四十六億年を「一日」に置き換えて考えると、私達人間がこの地球に誕生してからは、わずか「六秒」しか経っていないのである。他の文明と時間的に重なる可能性自体がきわめて低いことがわかる。

 たまたま今日、千駄(せんだ)()の喫茶店ルノワールで、(ひげ)の紳士と話し込んでいる矢追純一氏を目撃した。こちらから「近々、何か番組をやる予定はあるのですか」と声をかけると、「いやあ、特にないんだけどねぇ。フジがちょっと、やる気になってるかなぁ。プッシュしといて!」と頼まれてしまった。なので、プッシュ、プッシュ。



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