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なぜトヨタは逆風を乗り越えられるのか
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1 運・不運の考えから脱する

『なぜトヨタは逆風を乗り越えられるのか』
[著]若松義人 [発行]PHP研究所


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◎──リーマン・ショックは天災か

「運がいい」「運が悪い」という言い方がある。

 事態には自分の力で対処できることと、自分の力ではどうにもならないことがあり、後者を一般に「不運」という。

 たとえば平成三年に日本で起きたバブル経済の崩壊や、平成十九年に米国投資銀行の破綻(はたん)から起きた世界的な金融危機リーマン・ショックなどは、不運の代表ではないだろうか。順調に推移していた企業が突然、大変な赤字に陥ったり、存亡(そんぼう)の危機に立たされたりするのだ。これまでの努力と創意は何だったのだろうかと、経営者や社員が嘆くのは当然だといえよう。

 ただ、一方で「運が悪い」と言いつのるだけでは事態が解決しないのも現実である。

 トヨタ自動車は、リーマン・ショック後の経営最悪期に、世界規模のリコール問題が起きるというダブル・ショックに見舞われた。そんな時期に社長(第11代)に就任することになった豊田章男(とよだあきお)氏は「運が悪い」経営者の代表格といえるだろう。リーマン・ショックは不運の代表といえるし、リコール問題にしても、就任以前の生産体制や、問題発生直後の対応のまずさに起因するからだ。

 にもかかわらず、すべての責任を負う形で米国議会下院の公聴会にまで引っ張り出されたのだから、たまったものではない。

 しかし、ある人が「次々と災害が襲いかかりますね。運の悪さを感じますか」と質問したところ、章男氏はこう答えたという。
「災害? 運が悪い? 被害者のようなもの言いは不謹慎ですよね。あれらは、決して天変地異のような災害とは違います。すべては我々がみずから呼び込んでしまった人災だと認識しているのです」

 章男氏は「就任前の失敗の尻ぬぐいをさせられているのではありませんか」という言い方にも、こう反論している。
「尻ぬぐい? 私の責任じゃない? とんでもない。私は就職してからずっとトヨタ自動車の社員、ど真ん中の当事者なんです」

◎──再生の王道


 バブル崩壊やリーマン・ショックの直後には、すべての責任を「災害」に押しつける人が多かった。気持ちはわかる。確かに一個人の力で防げることではない。

 とはいえ、万一に備えるのがビジネスであり、わずかの予兆も見逃さないのが経営である。順調な間は自分の努力と創意を誇っておきながら、うまくいかなくなると「運が悪かった」ですませては、ピンチをチャンスに変えることはできない。

 章男氏の就任前後のトヨタの深刻な事態は、誰が見ても新社長の責任ではなかった。だが、事態に立ち向かうのは社長である。「運が悪い」時に社長がどのような姿勢をとるかは、社員の士気にも、危機管理の遅速・巧拙にも、対外的なアピールにも、重要な影響を与える。

 松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助(まつしたこうのすけ)氏は、「失敗の原因は我にあり」と、くり返し説いた。「私の責任ではない。これまでのやり方に問題があった」と責任転嫁するのでなく、あらゆることを「自己責任」と考える。そうすることで初めて、失敗に負けない仕事、ピンチを活かす経営ができるようになる。
「富士山は西からも東からも登れる。自分が方向を変えれば新しい道はいくらでもひらける」とも、幸之助氏は言っている。自分の力ではどうにもならない事態の中でも、自分を変えることだけはできるのである。

 リーマン・ショックで深刻な痛手を負った企業が回復を模索する道は、さまざまだ。非情な人員整理や、露骨な下請けたたきに走る企業も少なくなかった。製品の質をひそかに落とす企業もあった。

 そんな中で、トヨタは創業の原点に立ち返ることで、失敗を二度とくり返さないような再生を果たしているかに見える。そういう「王道の再生」ができているとしたら、それは、社長就任時の章男氏の自己責任論からスタートしているのではないだろうか。
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