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「らしく」ということばを、このごろ、よく考える。「青年は青年らしく」、「老人は老人らしく」というのだが、いったい、老人が老人らしくというのは、どういうことなのだろうか。
背をかがめ歩行がヨタヨタしておったり、食欲だけが旺盛で、あとはアワワのワの恍惚の人がまさか、老人らしいということではあるまい。世間ではどうやら態度が控え目で、若い人に花を持たせるということを指しているようである。それが、ほんとうに老人らしいかどうか知らないが、すくなくとも若い人に喜ばれることは、たしかである。そう知ってから、あらゆる場所での発言は控え目にし、聞き手にまわるように心掛けている。すると、いろいろ得なことのあることがわかってきた。
たとえば、対談、座談会などという場合である。若いころは、相手の話の腰を折り、シャニムニしゃべりたてた。