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おかしな漫才が、人気を浴びている。「赤信号、みんなで渡ればこわくない」、「妊娠がこわいとばあさんピルをのむ」などは、まだいいとしても、「ひどいブス、とまった銀バエ即死する」などというのは、どういうものであろうか。しかも、それを聞いて、ゲラゲラ笑っている娘たちを見ると、いったい、どういう神経かと考えさせられる。しかし、消息通にいわせると、どんなに不器量でも、女性というものは、みんな、自分だけはブスでないと思っているところが、この漫才の救いなのだという。
文豪トルストイは子供のころ、みにくい子供だった。で、母親がいつも、
「レオや、お前は、ひと様に親切にしてあげないと、だれからもかわいがってもらえないよ」
といってきかせたものだという。子供心にもそのことの意味することは、トルストイも察していた。それで、つとめて人に親切にするように心掛けた。それが、後年、彼を偉大なる人道主義者に仕立てあげたというのを、何かで読んだことがある。