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将棋の升田幸三九段の造語である。「しんて・いっしょう」とよむのか「あらて・いっしょう」とよむのか知らない。語呂がいいので、私は「しんて・いっしょう」とよんでいる。いうところの意味は、一局ごとに新手を発見開拓して行くということである。
升田将棋はよく“創作将棋”といわれる。将棋は、きびしい勝負の世界だ。勝つにこしたことはないが、問題はその勝ち方で、ポカ(敵失)による勝利では意味がない。堂々と勝って、しかも、その棋譜が後世に残るような名棋譜でありたい。升田九段は、いつもそれを狙っているというのである。氏の将棋が創作とか芸術といわれるのは、そのせいである。
しかし、それは、何も将棋だけではない。芸能に関することはすべてそうで、文学、絵画、音楽、能すべて、そこには創造ということに賭けられている。そのためには、たえず自己革新――脱皮が行われねばならない。考えてみると、そういう仕事を選んだ人は、ある意味では“業”を背負った人ということができる。しかし、その結果として、人類に、素晴らしい遺産を残してくれている。
たとえば詰将棋である。その中に雪隠づめというのがある。玉を盤の隅でつめる。あるいは5五の目=将棋盤のドまん中に追いこめつめて行くのもある。