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向田邦子さんの『阿修羅のごとく』というテレビドラマがあった。トルコ軍楽隊の曲を伴奏にして、四人姉妹の凄絶な心理的葛藤を描いたものだったが、見ていて、女の修羅場は、たぶんに陰湿だなと思った。そこへ行くと、男の修羅場はカラッとしているが、荒っぽい。
定年退社後の浪人生活までふくめて、ジャーナリスト生活四十五年、幾つかの修羅場をくぐって来た。いや、小さな修羅場は、今でも、一週間に一回ぐらいは演じているかも知れない。しかし、何といっても、その最たるものは、週刊朝日の編集長時代であった。
雑誌の編集長は別名を“接客夫”という。