第一講 売れる顔・売れない顔
機会があって、二人のトップセールスマンと会った。一人は累積二〇〇棟を売り切った湘南ミサワホーム営業所長間宮三郎氏。もう一人は九年間、連続第一位というフランスベッドのセールスリーダー今野正捷氏である。
――間宮氏の場合はこうである。
「まず展示場へご案内する。そこで20坪、36坪、45坪とさまざまなタイプの住宅をご覧に入れる。そして、タイプがきまると、次に実際にそのタイプで家をつくられたお客様のところへご案内する。先様には、あらかじめ話は通じておく。見本と実物との検分というわけです。その時、お客様同士で話し合いをしていただく。つまり情報交換ですね。
工期が意外に早かったとか、インテリアが気が利いていたとか、ここのところの手直しが面倒だったとか、私をヌキでジカにお話し合いをしていただく。私は、これを“分身セールス”といっております。お客様が私の代りにセールスをしてくださる。
秘訣ですか? 勉強、勉強、勉強ですね。それに知ったかぶりをしないこと、ヤレナイことはヤレナイとハッキリいうこと。それに“ビジャー”ですね。ええ、私は、休日には、家族連れでドライブするんです。その行く先々で建てかけのお客様の工事の点検をして廻るんです。ビジネス兼レジャーなので、私はこれを“ビジャー”とよんでいる」
工事がすむと、間宮氏はいつもお客様に
「お気に入りましたら、リベートをください」
という。客が変な顔をする。彼はにこやかにいう。
「いいえ、お金ではありません。新しいお客様をお連れした時、よろしくおねがいいたしたいのです」
――今野氏の場合はこうである。
「訪問セールスは、朝10時半から午後1時半までが勝負。主人や子供を送り出して主婦がホッとしているこの時間帯に、だれが、一番はじめにとびこむか、これですね。今の主婦は、自分で自由になる金を一人月平均二万円は持っている。これをめざすわけです。つぎは“O型の人を狙え”ということ。この血液型の方は、判断が早い。
私は、いつも年間目標をつくります。さらにこれを月別に割り、その分を25日間で達成する。(今日もやった、やった)と思うと自信にあふれ、顔色も輝いてくる。その勢いで、“こんにちは”と、アタックすると二、三件がまたたく間に売れて行く。私はこれを“売れる顔”といってる。ところが、反対にショボショボして“ごーめーんーください”なんて入っていくとダメですね。“売れない顔”です。これが、私の“一日3時間即決販売法”です」。
二人とも口をそろえていっているタブーは二つ。
一、かりに成功しなくっても、グチや、いわんやお客様の悪口は口にしないこと。
一、女性一人の家を訪問したら、必ずドアを開けておくこと。