野生動物は生きるために食べ物を求めて走り回る。このことは、走れなくなったときが寿命の終わりを意味する。言葉を換えれば、野生動物は死の直前まで動き回っているということになる。ぼくの理想的な死に方は、このような野生動物的往生だ。先日、早朝にイヌを散歩させていたとき、この理想死を目の前で見ることができて感激した。
体重三〇キロほどで、サリーとよぶ一三歳になるラブラドールがいた。うちのシェパードとは相性がよく、長年にわたっていつもよく遊んだ。その日も、ひとしきり走り回りじゃれ合ったが、別れようとしたとき事件が起こった。サリーが野原の真ん中で急にうずくまって動かなくなってしまったのだ。