第一回目の練習が始まった。長い三味線の導入部があり、長唄が始まる。「こと〜しよ〜り、ひとに〜むこう〜る、はる〜ごと〜に〜(今年より人に迎うる春ごとに)」という初めの一段落の振りをまず覚える。ここで、姿勢、脚の運び、首の位置について徹底した指導を受けた。
動作の多くは、学生時代に熱中した空手の型によく似ていた。そんなせいか、からだの動きにはまったく違和感がなかった。「なかなかたち(質)がいいですね」という師匠の言葉にすっかり気をよくして、練習にますます力が入った。早朝、イヌと散歩するとき、野原の片隅で長唄を口ずさみながら、短い木の枝を扇子に見立てて振りの復習をした。