日本舞踊の本質「もどき」。その「もどき」は、物真似と見立てという二本の柱からなるという。ここで超老人は、この卓越した見解に納得しつつ、むしろ、「もどき」こそ日本文化全般を理解する要になっていると考える。
よくこれまで、日本人は物真似はできるがオリジナリティーに欠けるという批判が浴びせられてきた。だが、物真似によって原物以上のものができることは、物真似が単なる模倣ではなく、原物の本質がより深く理解されることによってはじめて可能になる。クルマにしろ電子技術にしろ、いまやそれが世界のトップレベルにあることは、伝統的な物真似文化の創造的な一面が発揮されているからにほかならない。