武官会議後も、集まる情報はドイツの対ソ開戦必至のものばかりだった。小野寺はいっそう独ソ開戦に確信を深め、東京の参謀本部に何度も報告するが、それらは無視される。東京からは、「ベルリンからドイツは英本土上陸作戦を実行する意図であると報告してきているから、その実施時期を報告せよ」との命令ばかりだった。
さらには、「貴官は英米の日独離間策に乗ぜられ……」との電報まで受け取った。小野寺が、リビコフスキーやマーシングらから得た情報をもとに、参謀本部宛に「ドイツは日本が考えている様に全面的に協力的ではない」「米英を相手に戦争を始めるな。絶対にしてはならない」「もし、日本が米英に対して戦端を開くとすれば、それはおそらくヨーロッパにおける“盟邦”ドイツの勝利を期待してのことに違いないが、それは誤った期待だ。