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「モンスター新聞」が日本を滅ぼす
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まえがき

『「モンスター新聞」が日本を滅ぼす』
[著]高山正之 [発行]PHP研究所


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 長野市で実際に起きた話である。市の保育園でお遊戯会があった。小学校でいう学芸会みたいなもので、父母が舞台に立つわが子の晴れ姿にカメラを向けるという、お馴染みの光景が展開された。

 ところが翌日、園児の母親が市を通して保育園にねじ込んできた。わが子がどの場面で舞台のどこに立つのか、事前に知らせがなかった、いいアングルでビデオを回せなかったのは保育園の手落ちだと。

 そんな低い次元の話が突如として市政の横暴にすり替えられ、自らを圧政の弱者、犠牲者に仕立てて、声高に市長から園長まで、その責にある者の落ち度を追及する。

 市もその対応に困って、結局この母親1人のために、園児にもう一度お遊戯会を再演させて、母親に心ゆくまでカメラを回させた。

 世にいうモンスターペアレントだ。

 不都合があると、わが身は振り返らずひたすら他人の責任を追及する。この母親の振る舞いを見ていると、『朝日新聞』とか『中日新聞』とかの論調を思い起こしてしまう。ホントによく似ている。

 たとえば、ちょっと前に茨城県神栖(かみす)町で井戸水を使っていた住人に中毒症状が出た。調べたら井戸水から高濃度の砒素(ヒソ)が検出された。

 そういう情報が伝わって、普通の人はどんなことを思うだろう。

 この辺は田んぼが多い。井戸水はおいしいというが、そういう環境では農薬汚染も考えなくてはいけないのかとか。あるいは町営水道があるのに、それを引く費用や水道料をケチると思わぬ災難にぶつかるものだと思った人もいるだろう。

 健康で安全な生活とは決してただでは得られないものだという感想もあっただろう。

 ところが新聞は、そんな他山の石みたいな発想はまったくない。まずこの不都合の責任はどこにあるかに思いをいたす。
『朝日新聞』を例に引く。高濃度の砒素が検出された事実から、この新聞は「砒素は旧日本軍が毒ガスに使っていた」と飛躍する。

 そういえば、中国人が日本軍の遺棄した毒ガスで被害に遭ったと訴えてきた。それが真っ赤な嘘だったことなど気にもしない。これを併せれば、神栖町に旧日本軍が毒ガス兵器を埋めたと想像できる。地元の古老に聞くと、現場の近くに「旧日本軍の飛行場があった」という。これで決まりだ。

 かくて『朝日新聞』は「神栖町の井戸水汚染は旧日本軍が遺棄した毒ガスが漏出して起こした」ことにして、その責任者、つまり自虐史観でいう「悪い日本」の糾弾が始まった。長野市の母親以上の豊かな想像力だ。

 テレビを含めた他のマスコミも『朝日新聞』に(なら)い、神栖町の騒動は旧日本軍が仕出かした不始末で、健康被害を受けた住民は悪しき日本の犠牲者で、「日本国政府」にはその償いをする義務があるという論調を展開した。

 厚生労働省も環境省も茨城県も、この「モンスター」には(かな)わない。何の根拠も証拠もないけれど、その尻拭いを決めた。なぜなら、何をどう償おうと政府にとっては国民の税金だから、どうでもいいことだった。

 厚生労働省と環境省と茨城県は、粛々と住民の救済措置を講じ始めた。そこでは、住民が水道代をケチって安全も確かめずに井戸水を飲用した身勝手は問わなかった。そんなことをいえば、「モンスター朝日」を刺激するだけだからだ。
『朝日新聞』はこの結果に勝ち誇り、住民はどれほどの賠償が出るのか、『朝日』を後ろに従えて大いに胸を膨らましたものだ。「モンスター新聞」と「モンスター住民」のコラボレーションは、しかし結末で破綻する。

 それは皮肉にも、汚染源の「旧日本軍の遺棄毒ガス兵器」の発掘調査のおかげだった。
『朝日新聞』の記者は、旧日本軍の悪行が白日の下にさらされる瞬間を心待ちした。それが出てくれば、『朝日』が戦後60年キャンペーンを張ってきた自虐史観の初の証拠になる。

 じつをいうと、自虐史観には過去、何の証拠もなかった。すべて学者と中国人が捏造したものばかりだから、神栖町の毒ガス兵器にかける『朝日新聞』の期待は大きかった。

 しかし、それが間違いだった。発掘調査とは検証を意味する。自虐史観の天敵はその検証だ。今回発掘された砒素の素はコンクリートで固められた産業廃棄物だった。

 鑑定の結果は平成の御世に不法投棄された産業廃棄物で、業者が作業中に投げ捨てたコーヒーの空き缶も出てきた。

 さすがの『朝日』も、缶コーヒーが出たのではもう旧日本軍の仕業にはできない。待機した同紙の記者は舌打ちして、それっきり神栖町に触れる記事は消えてしまった。

 もちろん旧日本軍、そして日本人にかけた濡れ衣を謝罪することもなければ、踊らせた住民に踊り賃を払うこともなかった。

 この顛末は『朝日新聞』のサンゴ落書き事件にも似ている。ある日の社会面に「K・Y」といたずら書きされたサンゴの写真が載り、「これは、将来の人たちが見たら、八〇年代日本人の記念碑になるに違いない。百年単位で育ってきたものを、瞬時に傷つけて恥じない、精神の貧しさの、すさんだ心の……。にしても、一体『K・Y』ってだれだ」と告発する。

 ここまで日本人を誹謗(ひぼう)した記事は寡聞にして知らない。しかし日本人は中国人とは違って、環境を大切にしてきた。そんなことをする者の多くは日本国籍ではない者か、朝日新聞記者のどちらかだ。

 そして案の定、サンゴ落書きも『朝日』の記者がやったことだと判明する。しかし『朝日』はさんざん言い逃れをした挙げ句、偽りのネタで日本をここまで誹謗したことは謝罪しなかった。

 このモンスターぶりはいまもって治っていない。本書でも指摘しているように、中越沖地震では日本の原子力発電行政や原発そのものにあらぬ因縁をつけて、それがまったくの根拠のない因縁とわかっても知らん振りを決め込む。

 海上自衛隊が回避行動をとらなかった漁船と衝突した事故でも何の根拠もなく、ただ自衛隊だから悪いという不都合な非難を繰り返す。実際に何が起きたのか、そんなことはモンスターには関係ないことだからだ。

 本書はいまのマスコミが陥っているモンスター症候群がどれほどのものか、実際の事件に即しながら指摘し、本当は世の中がどういう姿をしているかを示したつもりだ。

 新聞をどういうふうに読めばいいか、それを探るヒントになれば幸せである。


 二〇〇八年三月高山正之 
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