『小さなことで感情をゆさぶられるあなたへ』
[著]大嶋信頼
[発行]PHP研究所
感情をゆさぶられてしまうことって、ありませんか?
食事中に、ちょっとした一言でムカッときてしまって、せっかく楽しんでいたのに気分が台無しになってしまう。
そんなに怒らなくてもいいようなことで怒りが止まらなくなってしまい、そのことを考え続けて時間を無駄にしてしまう。
突然、不安になって止まらなくなり、余計なことをしちゃったり、口に出してしまって後でものすごく面倒なことになってしまう。
みんなが怖がっていないのに、自分だけが妙にビビって、後になって悔しい思いをしてしまう。
ちょっとしたことで動揺してしまったり、自分の感情をコントロールできなくなってしまうのが、「感情をゆさぶられちゃっている」状態です。
私自身は、子どもの頃から「自分はおちょこだ!」とずっと思っていました。おちょことは「器が小さくてちょっとしたことで動揺してしまう人」のイメージです。
周りの人は同じ体験をしてもちっとも感情をゆさぶられないのに、自分はなんでこんなに泣いたり、怒ったり、怖がったりって自分の感情をコントロールできないの?と悩んでいました。
「自分のこのおちょこの性質を取って外せるものだったら、すぐに取って外してしまいたい!」と子どもの頃からずっと思っていました。
そんな私がカウンセリングを重ね、クライアントさんと一緒に「どうして感情をゆさぶられちゃうの?」ということを考えているうちに面白いことが見えてきました。
「感情をゆさぶられる」って、まるで自分の中にコントロールできない魔物がいて、それがちょっとしたきっかけで暴れるから大変なことになる、と思っていたけれど、「え~! 感情って魔物じゃなくて、作られたただの幻想なんだ~!」っていうことがわかってきたのです。
感情は周りの人によって作られている幻想なので、それをコントロールしようとすればするほど現実味を帯びてしまって、まるで魔物のように暴れる生き物のように動いてしまいます。
でも、感情の正体をつかんでしまったら「なーんだ! こんな簡単なことで悩んでいたんだ~!」って手品の仕掛けを知ってしまった時のような「あ~!」という気分になります。
感情のメカニズムについては心理学や精神医学でたくさん語られていますが、「感情は幻想かも?」という面白い切り口で「感情をゆさぶられやすい」をなくす方法をできるだけ専門的な言葉を使わずに紹介していきたいと思っています。
これまで語られてきた方法とはかなり違っているので、「え~! 本当なの?」って思うかもしれませんが、最後まで読んでいただければ「もしかして、そうなんだ」と感じていただけると思っています。
そして、文中で紹介している方法を使っているうちに「これが感情の凪なのかも~!」という自分の中の静けさを、感じられるようになっていただけたらうれしいです。
すぐに感情をゆさぶられて、生きづらい……
ケース01
人のちょっとした言動で怒ってしまって、いつまでも頭から離れない。
職場で同僚にあいさつをした時です。同僚は、他の人にはちゃんと笑顔であいさつをするのに、自分に対してはそっけない態度を返してくるので、次の瞬間に頭の中が「カーッ!」と怒りでいっぱいになってしまいます。
「自分が考えすぎなのかな?」とか、「自分の器が小さいからそんなささいなことで引っかかるのかな?」って思って、「気にしない! 気にしない!」って自分に言い聞かせてみます。
でも、あのそっけない態度がすぐに頭の中で再生されちゃって「ムカつく!」って怒りに取り憑かれて逃れることができなくなります。
そんな怒りが頭に充満してしまうと、目の前のことに集中できなくなります。集中できなくなると「あいつのせいだ!」とますます怒りでいっぱいになり、自分のやるべきことがちゃんとできなくなってしまうんです。
ケース02
「嫌われちゃったかな?」って不安になって余計なことをしてしまう。
相手と話をしていて、ちょっとした沈黙とか、相手の表情で「嫌われちゃったかな?」とか「相手に不快なことを言っちゃったかな?」と不安にゆさぶられてしまいます。
「相手から見捨てられちゃうかも!」という不安にゆさぶられて、頭が真っ白になってしまい、「なんとかしなければ」と焦ってしまいます。
でも、焦れば焦るほど、余計に相手が不快になるようなことを言ってしまったり、やってしまって、「あちゃ~!」となって、ますます不安にゆさぶられてしまうんです。
家に帰って1人反省会をしているときは「人の気持ちなんて考えないでもっと堂々としていられたらいいのに!」と思います。でも、実際に、相手と話したり、顔を合わせたりすると、どうしても「見捨てられる!」という不安にゆさぶられてしまい、落ち着きがなくなり、ソワソワしちゃって冷静に判断できなくなってしまい、後悔するようなことばかりしてしまうんです。
ケース03
「理解されていない」って感じたらものすごく不機嫌になってしまう。
相手に自分の気持ちを察してほしいのに、自分が望んでいた答えとは違ったものが返ってくると「わかってもらえない!」と感情をゆさぶられてしまい、相手にまるで子どものように、ふてくされた態度をとってしまいます。
自分が求めていることをちゃんとはっきりと言葉で伝えていないから、相手に通じていないことはわかっているんです。でも、「なんでわかってくれないの!」という悲しいような、寂しいような感情にゆさぶられて、子供じみた、ふてくされた態度が止められなくなります。
こんな態度をとっていれば、ますます相手はこちらが何を考えているのかわからなくなり、私が求めていることをしてくれない、というのはわかっています。「ふてくされた態度をとっても時間の無駄」というのに自分でも気がついているのですが、「わかってもらえていない」という寂しい気持ちにゆさぶられてそれを止めることができません。
ケース04
つながりたい、一体感を得たいと思う人と切り離されていく。
一緒にいて楽しい人や「この人と一緒にいたら人生が豊かになるかも」という人がいます。
でも、ちょっとした会話の中で相手が「それはそうじゃなくてこうでしょ!」と軽く訂正しただけなのに「否定された」と受け取っちゃって感情がゆさぶられてしまい、それまでの“楽しい人”から一転して「私のことを馬鹿にしている悪いやつ!」という感覚になってしまいます。
さっきまで「会話をしていて楽しい!」と思っていたのに、怒りの感情でゆさぶられてしまって、「自分のことを下に見ているからそんなことを言う!」と相手の気持ちを勝手に想像してしまい、そこから相手の目をまともに見られなくなってしまいます。
いつも、ちょっとした一言で感情がゆさぶられて場の空気を悪くして、絶対変な人って思われただろうなと思うのですが、感情をゆさぶられちゃうと自分では止めることができなくて、同じことを繰り返しちゃうんです。