オランダのここ一年来の世論調査では、巡航ミサイルの国内配備には五〇から六〇パーセントをこえる人々が反対という結果が出ている。総人口一千四百万の国で五十万人もの参加の反対大集会が開かれたのも、こうした背景からである。
ところがその一方で七〇パーセント以上の人たちが、オランダはNATOに留まるべきだと答えている。NATOの決定による自国への核ミサイル配備には反対だが、自国の安全保障がNATOの集団防衛体制に組みこまれていることにはあくまで賛成する、という一種のジレンマである。
にもかかわらず、巡航ミサイル配備への反対運動が西欧随一の高まりと広がりをみせたのは、核兵器そのものへの恐怖や、東西両陣営の核戦力強化競争への不安のほかに、運動が打ち出した現実路線のせいだろう。