デローズ伯爵は自国の破滅にもつながりかねない深刻な想定について、落ちついた口調で説明していく。核戦争などという私たちの想像をこえ、冷静な思考を麻痺させるシナリオを理論だてて語っていく。
もっともこの点では他の専門家たちも同じだった。「フランス国際関係研究所」で核戦略や東西関係を研究するドミニク・モイシー副所長も、フランスの核政策を淡々と語った。
「フランスの抑止はもちろん核戦力に最大の比重をおいています。しかもそれは独立した核戦力です。それはドゴール時代からの一貫した伝統です。ただ七〇年代に入って拡大抑止という考え方が現われてきた。