さて私はボンからミュンヘンへ飛んだ。ミュンヘン郊外にある「国際問題研究所」を訪れるためである。この研究所は西ドイツでは国際安全保障研究に関しては対外的にもっとも知られた機関のひとつである。研究所の建物は静かな森の中にあった。
所長のクラウス・リッテル氏にまず話を聞いた。
――ソ連の西側に対する戦略をどうみますか。
「SS20などの軍事力増強によりソ連は、二重効果をめざしています。ひとつは純粋な軍事力とくに攻撃能力を強めることです。SS20により中距離核ミサイルを完全に近代化して、以前よりもずっとずっと強力にしました。