読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-1
kiji
0
1
1161883
0
上司のカルテ
2
0
0
0
0
0
0
ビジネス
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
はじめに

『上司のカルテ』
[著]吉野真人 [発行]すばる舎


読了目安時間:5分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ


 私は産業医として、さまざまな企業の社員と面談することや、人事や総務などの方々から社員の健康面に関する相談を受ける機会が多いのですが、内科医の私であっても、相談事の8割くらいはうつ病や適応障害などメンタルヘルスに関する問題が占めています。社会全体でうつ病などに見舞われる人が急増していますが、産業医として企業現場と関わっている上での実感としても、メンタルヘルスの問題が最近たいへん増えています。

 現代人は皆ストレスに囲まれて暮らしていますが、近年は特に職場におけるストレスが増えている、という話を多くの方からお聞きします。

 これはなぜなのでしょうか。業種にもよりますが、リストラなどの影響もあって特に正社員の勤務時間が長くなりがちで、職場に長く留まるためにプライベートの時間を取りにくい、という事情があります。そのために休養や睡眠に向ける時間が少なく、ストレスも溜まりやすいのです。

 その一方で、たいして残業時間が長いわけではないのにストレスに苛まれ、心を病んでしまう人も後を絶ちません。職場には長時間労働の他にいろいろなストレス要因がありますが、よく指摘されるものとして「コミュニケーション」の問題があります。職場の上司や部下、同僚、取引先、顧客などとの間でコミュニケーション上の齟齬が生じ、それが原因で大きなストレスを感じ、メンタル不調に陥ってしまうのです。


 職場のメンバー間では盛んにコミュニケーションが取られ、それが企業のビジネスを動かしていますが、その中でも特に直接の上下関係である「上司と部下」の間のコミュニケーションがとりわけ重要です。上司と部下は多くの場合、職場内のすぐ近くに位置し、業務の何割かを共有しています。したがって両者のコミュニケーションが上手くいかなければ業務に支障が出るほか、大きなストレスを抱えることにもつながるのです。


 実際に心を病んだ社員の相談を受けると、直属の上司や部門のリーダーとのコミュニケーションが上手くいっていないケースが大半を占めています。それだけが原因とは限らないものの、上司とのコミュニケーションの良し悪しが心の安定にとって最大の要因の一つと言っても過言ではないほどです。では、上司と部下との間では、なぜ、コミュニケーション上の問題が発生しやすいのでしょうか。


 部下が上司と上手くいかないケースとしては、例えば、上司から繰り返し厳しく叱られたとか、自分の報告をいつも無視される、あるいは仕事を与えてくれない、といったさまざまなパターンがあります。部下から話を聞く限りにおいては、上司が部下に対して配慮が足りない、部下のミスや欠点を必要以上に責める、部下に対してきちんと指導していない、あるいは部下の話を無視している、などと上司がまるで悪者に見えてしまうのです。


 ところが上司の側から話を聞いてみると、全く違った現実が見えてきます。上司にしてみれば、部下に対して業務内容をきちんと指導している、余計なプレッシャーを与えないようにしている、ミスの要因を適切に把握させている、あるいは部下の話はちゃんと聞いている、などの言い分が聞かれ、それなりに納得できます。どの上司も、部下とは良い関係を築きたいと願っていますし、また自分なりの努力や配慮はしているものです。


 すなわち上司にしてみれば、部下を一人前の社員に育てるために腐心しているものの、それが「間違った気遣い」となって、結果的に部下の成長を阻害してしまっていることが少なくないのです。実際の例で言えば、ミスをした部下に対して上司が適切に指導したつもりだったのが、部下にしてみればミスを必要以上に厳しく追及された、人格を否定された、などと感じて上司への信頼感が失われた、というケースがあります。


 そのような上司と部下との間のコミュニケーション上のミスマッチの一つの要因として考えられるのは、「世代間の意識差」です。例えばベテラン世代では、部下は上司の行なう作業を黙って見て覚える、という不文律がありましたが、いまの若い世代は丁寧に説明されなければ仕事のやる気が起こりません。そのような世代間の意識差を明らかにし、そのギャップを乗り越えるための工夫が必要です。


 次に上司の側が、充分に部下の立場に立てていないことが考えられます。上司が部下に話す言葉や取る態度が、部下の耳にどう聞こえ、心にどう感じ、日々の仕事にどのように影響するか、部下の立場に立って想像してみることが大切です。ところが多くの上司は仕事の忙しさにかまけて、自分の立場から部下を見て対応しています。また上司とはこういうもの、というプライドやレッテルが邪魔している面も無視できません。


 逆を言えば、上司が世代間の意識差を認識し、部下の成長を心から願い、働きやすい環境を整えようと考えていれば、自ずと部下の立場に立って指導をし、対応することが可能なはずです。もしそうなれば部下との間の「ボタンのかけ違い」はぐっと減り、部下は活き活きと働くことができるようになります。上司がそのような配慮を欠かさなければ、社員間のコミュニケーションの盛んな活気ある職場に変貌します。


 本書では、上司が陥りやすい「間違った気遣い」を30のシチュエーションで取り上げ、6つのカテゴリーに分類しています。これを産業医による「上司のカルテ」として、なぜそれが良くないのかを分析し、続いて上司が本当は取るべき対応を、「部下と上司が幸せになる処方箋」として例示します。職場内で課題だと感じるテーマを中心に読み進んで、幸せで成長力のある上司と部下の関係を築いていただきたいと願っています。

吉野 真人


この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:0文字/本文:2311文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次