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(2021/11/26 追記)

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きょうも、せんべろ 千円で酔える酒場の旅
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くらし
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五反野◆串銀

『きょうも、せんべろ 千円で酔える酒場の旅』
[著]さくらいよしえ [著] 河井克夫 [発行]イースト・プレス


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◉ひと串入魂の希少もつ焼き



 大きな赤提灯のもつ焼き屋。うまい牛の塩煮込みが評判だが、「きょうはなくて」と“番頭さん”が申し訳なさげに言う。ぬっと現れたのは濃ゆい半生を顔面にたぎらせた親方だ。

「あともう少しなんだ」


 冷凍室をのぞくと桃色にきらめく肉が整列。肉料理であまった切り落としが、30人前たまったところで仕込むのが秘訣らしい。


 もつ焼き屋なのに、もつ煮じゃない煮込みがある。そう、ここはただの串焼き屋にあらず。


 肉厚な焦がしチーズステーキに、だしが染みたふっくら(あさ)()ガレイ煮、生ニラと唐辛子のニラムンチ(ニラのキムチ)まで和洋韓の料理が出てくる。もちろん串も一級。角が立ったレバーはレア焼き、コブクロは希少部位のカタコブまである。


 親方は10代から和食の修業を積み日本料理店を開業するも、これからは1本100円の串の時代と思い切った。結果、われわれ大庶民も本格(かつ)(ぽう)の味にあやかれる幸運。


 酎ハイのもと「(てん)()の梅」入りの串銀ボールを飲みながら、ふと思った。番頭、親方と呼び合うこのふたりの関係は? 「義理の父です」と番頭。ああ奥さんの父上かと思ったら、違った。

「母が(親方と)再婚したとき、僕は20歳すぎでした。やりにくいです、すごく。人は(興味津々で)見るし、親方はこわいし」。……それは絶対にやりにくい。


 10年前、勤務先の会社が傾きかけたとき、義父に料理の道に誘われ、「渡りに船か」と弟子入り志願。しかし、飛んで火に入る夏の虫、「目で盗め」という昔(かた)()と当然(きつ)(こう)

「ほうれんそう世代だから言われないとできません!」


 ついにやめると心に決めた3月11日、あの地震が起きた。


 街道にあふれる帰宅困難者のため、店を開けると言ったのは親方だ。番頭は一心不乱に(あつ)(かん)と煮込みを出し続ける。「夜になりテレビを見たら、家族を失ったみなしごが映っていて。自分は甘いなあって……(思い出し涙)」。


 一方親方は、「息子はまだまだ。みっちり修業しろいって。でもネギを切る音が変わったの。サク、サクだったのが、タタタタって一本の音になってね。涙? 別に出ないよ」。


 難しい煮物も、煮立ったときと、冷めたときの味を教えるだけ。師弟は主に背中で会話する。「ところで親方はおいくつで」と聞くと、「俺、何歳だ」「58です」と代わって答える番頭さん。ツンデレの似た者親子なり……(泣)。


 待て!


 落涙するのは、幻の牛煮込みを食べたときだ。


◉お店情報


 串物などの固定メニューのほかに日替わりの“黒板メニュー”もある。親方の村山智也さん、番頭の村田賢一さんの連携プレーで飲んべえたちをうならせる逸品メニューが次々と生み出される。ただし、いったん登場しても、人気がなければメニューから消滅。料理を受け止めるのは「串銀ボール」。下町の正統派、酎ハイのもと「天羽の梅」入りの焼酎ハイボール。本文で紹介している「カタコブ」は豚のコブクロ(子宮)の芯の部分。歯ごたえがあってうまい。


◉お品書き

・生ビール 500円

・串銀ボール 270円

・串焼き1本 100円

・ニラムンチ 300円

・牛カットステーキ焦がしチーズ 800円

・キャベツ浅漬け 200円

・カタコブ酢みそ 400円

・手羽先大根煮 480円

・カレーうどん 650円


串銀

住所▼東京都足立区足立4‐14‐1

電話番号▼03(5888)7085

営業時間▼17時~24

定休日▼月曜


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