同じ難民キャンプでも、隣国のイスラエルにあるガザ地区は、様相が大きく異なる。危険度を五段階評価で測定するとして、ヨルダンが3だとすれば、ガザ地区は文句なしの5だ。
ヨルダンを訪問して以来、パレスチナ問題への関心をさらに深めた僕は、民族対立がもっとも深刻な地域であるガザ地区を訪れなければならないという想いを強くした。幸運にも壁の内部でUNRWAの日本人職員が働いていると聞き、面会に成功したのだ。
その壁はざらざらしており、打ちっぱなしのコンクリートが使われていた。触ると灰色の粉が手につく。
高さ一〇メートル近い威容を前にして、僕は壁のなかの人たちのことを思った。