◆ただ「学校で使うだけ」ではもったいない
小学生の勉強にとって、教科書は基本中の基本です。
なぜなら、教科書には、その学年で学ぶべきものが、過不足なくきちんと載っているからです。
ですから、教科書を使いこなして、さらには使い尽くして、小学生の間につけるべき学力を子どもにしっかりつけさせてあげてほしいと思います。
それが私の願いであり本書の目的です。
教科書ほど、子どもにとっても親にとっても身近なものはありません。
そもそも、教科書は、入学すれば誰もがもらえるものです。
持っていて当たり前のものです。
いつも身近にあるものだからこそ、「教科書って何のためにあるんだろう」とか、「どう使えばもっと子どものためになるのか」など、あらためて考えることはないかもしれません。
ほとんどの親たちが、「教科書は学校の授業や宿題で使うもの」と漠然と思っているだけで、それ以上深く考えたことはないはずです。
でも、それは、ひじょうにもったいないことです。
教科書は、勉強内容を段階的に理解できるようにいろいろな工夫がされています。
効果的に使えば、学力を身につけるための究極のツールにすることができるのです。
わが子の学力アップを願うなら、まずは毎日使っている教科書とのつきあい方や効果的な活用方法を一度しっかり考えてみることをお勧めします。
空気のようにあって当たり前の存在である教科書のありがたみ、素晴らしさを親が理解したとき、子どもにも大きな変化が現れます。
◆薄くてもわかりやすさはピカイチ
教科書はとても薄く、とくに低学年のものは大きな文字で書いてあって、情報量が少ないように感じます。
当たり前のことですが、大人の目には、わかりきったことしか書いてありません。
でも、よくよく見ると、いろんなことに気づくはずです。
たとえば、1年生の算数では、「10までのかず」や「たしざん」を学んだ後に「ひきざん」に入ります。たいてい、最初にこんな問題があります。
「〈1〉くるまが ○だい とまっています。
↓
くるまが ○だい でて いきます。
↓
くるまの のこりは、○だいです。」
それぞれにイラストがついていて、子どもはそれを見ながら「のこり」を考えます。次のような問題もあります。
「〈2〉ぶろっくが ○こ あります。
↓
ぶろっくを ○こ とります。
↓
ぶろっくの のこりは、○こです。」
ここで注目してほしいのは、それぞれの問題の2つ目の文章です。
〈1〉の車の例題のときは「でて いきます」。〈2〉のブロックの場合は「とります」となっています。
7歳の子どもには、「引き算」という概念が頭にありません。ですから、子どもにもなじみのある車やブロックを使って、「でていく」や「とる」という言葉で「ひく」の意味を理解させようとしているのです。
「りんごが 8こ あります。
5こ たべました。
のこりは いくつでしょうか。」
「えんぴつが 10ぽん ありました。その うち 3ぼん けずりました。
けずって いない えんぴつは なんぼんでしょうか。」
こうした問題を解くことで、「5こ たべました」も「3ぼん けずりました」も、「ひく」ということだとわかってきます。そうすると、
「ひきざんを しましょう。
5-3 2-1 4-2 5-4」
という式の意味がわかるようになりますし、
「9-3の しきに なる もんだいを つくりましょう。」
という問題にも答えられるようになります。
これはほんの一例ですが、どの科目の教科書もその学年の子どもたちがわかりやすいようにいろいろな工夫がされています。
専門家集団が苦心し、たくさんの制作者の目を通して作られているのです。
もちろん、人間が作るものですから、教科書も絶対完璧ということはありません。私も、「もっとこうすればいいのに」と思うことはたくさんあります。
それに、教科書の練習問題は、スペースの関係で解答をそこに直接書き込めないという短所があります。つまり、教科書の練習問題をやるときは、それをノートに書き写さなければならないのです。
その点、問題集なら直接書き込めるので、その分だけ子どもにはやりやすいのです。しかも、書き込んだものが残っていくので達成感も持てます。
また、子どもは目新しいものが好きなので、日頃使っている教科書よりも目新しい問題集のほうが燃えるということもあります。
これらは、教科書の短所であり問題集の長所です。
でも、すべては一長一短です。教科書には、これらの短所を補って余りある長所があるのです。費用がかからないという点もそうですが、その最大の長所は「授業とテストに直結している」ということです。
つまり、教科書を究めれば、授業がよくわかりテストでいい点が取れるのです。
これについては、後で詳しく書きたいと思います。
そして、先ほど触れた教科書の短所は、すべてちょっとした工夫で乗り越えることができるということも強調しておきたいと思います。
その方法についても、後で具体的にたくさん紹介していきます。
このようなわけで、ぜひ、新しい目でもう一度教科書を見てみてください。
教科書を効果的に使えば、子どもの学力をグングン伸ばすことができるのです。