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反日・愛国の由来
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政治・社会
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増補版へのまえがき

『反日・愛国の由来』
[著]呉善花 [発行]PHP研究所


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 韓国の北朝鮮をめぐる国論は、真っ二つに分かれている。

 一つは与党セヌリ党に代表されるもので、「北が核開発・核兵器を放棄しない限り一切の対話に応じない、援助も人道的なものに最小化する」というものだ。もう一つは最大野党・民主党(旧民主党、市民統合党、韓国労働組合連盟が合同で二〇一三年五月に結成)に代表されるもので、「金大中(キムデジユン)盧武鉉(ノムヒヨン)政権が推進した対北朝鮮融和・援助政策としての太陽政策の再開、無条件での北朝鮮との対話推進」である。ただ、朴槿恵(パククネ)大統領は、政権が発足してから間もなく、セヌリ党の当初の方針から、核の放棄を求める一方で、対話と人道支援を通じて信頼の醸成を図るという「朝鮮半島信頼プロセス」の推進へと方針を切り替えている。

 金大中・盧武鉉政権では親北朝鮮姿勢が圧倒的に優勢だったが、北朝鮮の核実験強行問題もあり、以後の李明博(イミヨンパク)政権になると、北朝鮮による金剛山(クムガンサン)韓国人観光客の射殺、天安艦(チヨンアンハム)射撃、延坪島(ヨンピヨンド)砲撃以後、北朝鮮との対話も観光も中止となった。こうして親北朝鮮勢力は後退し、政権は厳しい対北姿勢をとるようになり、二つの対北朝鮮姿勢がほぼ半々で拮抗するという新たな状況が生まれた。朴槿恵政権下でも前政権の対北姿勢の原則をさらに強化もしている。北による西海上での侵攻があった場合は、北朝鮮の指揮部を砲撃するという強い意志と、年初には米軍との陸海空合同軍連も行なうなど、強い姿勢を見せた。

 この対北朝鮮姿勢をめぐる政治対立は、そのまま与党セヌリ党を中心とする新自由主義的な傾向の政策と、野党民主党を中心とする民主社会主義的な傾向の政策との、経済・社会政策をめぐっての対立ともなっている。

 李明博政権を引き継いだ朴槿恵政権が、このように危うい勢力バランスの上に乗っていることと、韓国の反日姿勢がかつてなかったほど強固なものとなっていることには大きな関係がある。戦後の米軍施政下で、米軍は日本統治時代の公務員、主な機関要員などを行政維持の要員に採用したが、朴正熙(パクチヨンヒ)政権でもそれをほぼ引き継いでいた。その後、六五年の日韓国交正常化により、日本から日韓経済協力協定に基づいた八億ドルほどの支援を受け、大部分を韓国の産業化の資金として使った。

 このようなことから、野党をはじめとする親北朝鮮政治勢力は、朴正熙を「親日派」だとして、その長女である朴槿恵の政権に対する攻撃材料としている。

 金大中・金正日による南北首脳会談以後の韓国では、同じ民族への愛を唱える「親北朝鮮」は「民族主義」の象徴であり、異民族である日本に対する「反日」は「愛国」の象徴となっている。そして現在の親北朝鮮政治勢力は、親北姿勢を潜め、反日姿勢を前面に押し出すというすり替えによって、社会の様々なところへと浸透している。北朝鮮のスパイは一二万名ほどだと言われるが、彼らは政府機関、マスコミなどに根強く入り込み、反日感情を煽動していると思われる。

 反日の隠れ蓑を着た親北政治勢力が「愛国」を煽り、国民の支持を得るために与党も「反日」姿勢を確かなものにしようとする。表面だけの愛国競争となっている。ようするに、政府が強硬な反日姿勢をとる限り、元来から強固な反日勢力でもある親北朝鮮派も大いに同調して政権を支持する、という構図になっているのである。

 これが、最近の韓国の異常なまでの反日姿勢の本態である。そのことに関連する一例として、私自身に対する韓国の一つの「処遇」を引き合いに出しておきたい。


 私は盧武鉉政権時代の〇七年に、韓国から入国拒否をされたことがある。日本国籍を取得して以後のことである。母の葬儀に参加しようとして済州(チエジユ)島に向かったのだが、空港で入国を拒否された。空港職員から拒否の理由は一切説明されず、とにかく上からの命令だからというばかりである。日本の知り合いに連絡を取り、外務省や領事館から働きかけてもらった結果、「葬儀に参加するだけ」という条件でなんとか入国許可が下りた。

 李明博政権になってからは、何度も韓国に行き来できていた。朴槿恵政権になっても、今年(一三年)の四月末から五月にかけて、何の問題もなく韓国へ入国することができた。

 ところが今年の七月二十七日、甥の結婚式に参加するために向かった仁川(インチヨン)空港で再び入国を拒否されたのである。前回と同じように、拒否の理由は一切告げられなかった。このときも、大使館に連絡を取ったり外務省から働きかけてもらえるようにして欲しいと、何人かの日本の友人に電話でお願いした。しかし、たまたま土曜日だったので、容易に連絡がとれないまま時間が経過し、強制的に帰国させられてしまったのである。

 乗務員が私のパスポートを預かるという形で、成田空港行きの飛行機に乗せられた。空港に着くと、日本の法務省の人だろうか、乗務員から一人の女性に封筒が渡され、その日本女性が封筒を開けて私にパスポートを渡してくれた。封筒には書類が一枚入っており、見ると韓国法務部からの送還指示書だった。「出入国管理法第七六条の規定により、以下の者を貴下負担で大韓民国の外へ送還することを指示する」といった内容が書かれていた。

 韓国出入国管理法第七六条の規定による送還は、「第一一条の規定により入国が禁止され、又は拒否された者」に対してのものである。そして第一一条には、伝染病者や精神病者などのほか、「大韓民国の利益又は公共の安全を害する行動をするおそれがあると認めるだけの相当な理由がある者」との規定がある。これを盾にとっての入国拒否だったのは確かだろう。

 私は四月末に安倍総理と面会しているが、これだけのことで私は韓国で「極右と夕食会」(『朝鮮日報』四月二十九日)などと猛烈に叩かれた。韓国政府の反日姿勢・安倍政権批判が執拗に繰り返されていた折りでもある。この一件で、再び私を入国禁止ブラックリストに入れたのではないだろうか。

 いずれにしても、韓国政府が入国拒否の理由としたのは、明らかに私の日本統治時代の評価にかかわる言論である。明白な言論の自由の侵害、移動の自由への人権侵害である。

 私のこの「入国拒否事件」は韓国でも大きく報道されたが、その内容はことごとくがおおむね次のようなトーンのものであった。
「韓国を誹謗中傷することで悪名高い韓国系日本人の呉善花氏が韓国入国を拒否されると、この措置に多くの人々が拍手を送った。記者自身も小気味よさを感じた。(中略)やりたい放題やってきた日本の極右派に韓国人の怒りを見せてやるべきだという思いもある。(以下略)」(『朝鮮日報』八月二日)

 韓国一流メジャー紙の記事だが、およそ下品なことこの上もない。また「言論の自由」や「人権」の問題に触れた報道は一つもなかったことを強調しておきたい。

 今回の私への「処遇」は、韓国政府・言論界が「日本極右の韓国批判と日帝評価」は言論の自由の範囲外の問題だという、超法規的な立場に立っていることをはっきり示している。このことをとくに指摘しておきたい。


 さて、韓国の親北朝鮮化は、文民政権による「過去清算」を名目に、保革一致で強力に推進されていったものである。南北首脳会談以後の親北朝鮮一色の大衆的政治ムードのなかで、北朝鮮による「日帝植民地支配の断罪」と「韓国軍事政権支配の断罪」は、きわめて徹底したものだと高く評価する声が出るようになった。それに比べて韓国はあまりにも不徹底なままで来たのではないか。そういう「反省」が国内に巻き起こっていったのである。

 この時代風潮を受けた韓国の文民政権は、北朝鮮を手本とするかのようにして、日本統治時代の「親日行為」と軍事政権時代の「人権侵害事件」を、超法規的な立場から一括して裁き、徹底した断罪を遂行していったのである。その結果、韓国社会を覆っていったのが、「親北=民族主義(民主)」「反日=愛国」の立場から、「親北=反日=民主」と等式で結ぶ新たな政治イデオロギーである。


 本書は、二〇〇三年に上梓した『韓国人から見た北朝鮮』に二つの章(八章・九章)を加えた増補版である。『韓国人から見た北朝鮮』(本書の序章から七章まで)は、「韓国人は、拉致事件を起こし核武装化を進める北朝鮮についてどのように考えているのか。韓国と北朝鮮に共通するメンタリティとは?」というテーマを出発点として、李朝(李氏朝鮮)にまで遡って朝鮮民族の思想を述べたものであった。
『韓国人から見た北朝鮮』を書いた時期は、金正日(キムジヨンイル)政権(北朝鮮)、金大中政権・盧武鉉政権初期(韓国)だが、文章はほとんど変更していない(ただし旧版の「おわりに」は増補分といくらか重なるので削除した)。北朝鮮という国の本質については十分に記しているし、韓国が親北朝鮮になった経緯についても「歴史」としてそのまま残すのがよいと思うからである。増補したのは主として、前著執筆以後の一〇年ほどの間に起きた韓国の対北朝鮮政策や認識の変化について、北朝鮮の動向についてである。

平成二十五年 九月二十日

呉 善花
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