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反日・愛国の由来
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政治・社会
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北朝鮮をめぐる日韓国民意識のズレ

『反日・愛国の由来』
[著]呉善花 [発行]PHP研究所


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 二〇〇二年九月十七日、平壌で行なわれた日朝首脳会談で、北朝鮮は数十名の日本人を拉致した事実を初めて認めた。それを契機に、日本では対北朝鮮観に劇的な変化がもたらされた。これまで、いくら北朝鮮でもまさかそんなことをするわけがないだろうと感じていた人たちが相当数いたのである。それがガラリと変わり、もはや北朝鮮にはなんらシンパシーをもち得ない情勢が生まれた。まずそこが、日本と韓国が決定的に異なるところである。

 韓国人からすれば、北朝鮮が他国民を拉致するなど当然のことにすぎなかった。したがって、日本人拉致事件の発覚は、韓国人一般の北朝鮮観に格別の影響を与えることはなかった。逆に、そこまで自らの非を明らかにしたことは評価できるとの見方すら広まった。

 それでは核開発の推進はどうか。これについても、韓国人の認識は日本人のそれと大きく異なっている。

 一九九三年に、韓国で『ムクゲの花が咲きました』という小説が大ベストセラーとなった。これは、北朝鮮と韓国が共同で核兵器を開発して日本を核攻撃するというストーリーなのだが、「たかがお話」と軽視はできないのである。

 そこでは、核兵器の保持を先進的な強国の象徴とみなし、民族の自立を支え尊厳を守る有効な手段なのだと、肯定する気持ちが働いている。その核兵器を北朝鮮が持てるまでになったこと、それは民族の誇りともなり得るのである。

 最近しばしば韓国で行なわれる「北朝鮮の核兵器保持をどう思うか」というアンケート調査では、「持ってもよい」が半数を超えている。同一民族に対して核を使用することは、けっしてあり得ないと信じているからでもある。しかも、核を保有する北朝鮮を吸収して南北統一を果たせば、一気に国際的に多大な影響力をもった統一韓民族国家が誕生する──そう考える韓国人は想像以上に多いのである。

 このように近年の韓国では、北朝鮮への危機意識が著しく薄くなっている。それは盧泰愚(ノテウ)政権末期から、徐々に北朝鮮情報を客観的に流すようになり、それがしだいに進んでいったことも要因であろう。

 私は一九八三年に来日したが、金日成(キムイルソン)親子の写真も映像も、日本に来てはじめてみている。私の世代が受けた教育では、北朝鮮は世界で最も過酷な恐怖政治を敷く悪の国家そのものであった。金日成の姿は絵でしか知らされることがなく、その絵たるやいかにも凶暴な悪魔のように描かれていた。私の印象では、血肉を(むさぼ)って肥え太ったライオンが、さらに獲物を求めて今にも跳びかかろうとしているような、すさまじい形相だった。

 ところが、日本に来て金日成の写真をみて最初に感じたことは、なんとハンサムで穏和な顔をしているのだろう、というものだった。以後、北朝鮮について知ることが増えていけばいくほど、職業軍人の経歴をもつ私のような者ですら、北朝鮮の客観的な情報をまったく知らされていなかったことに愕然としたものである。

 文民政権以後の韓国人も、私の体験と同じように、北について天と地ほどに異なる印象の落差を味わうことになった。

 ところが、その反動から、北朝鮮の脅威はまったくの幻想だったという正反対の幻想が、国内に拡大していくことになってしまったのである。それに伴い、かつてなら即時に準臨戦体制をとったはずの事件が起きても、軍が格別に大きな動きに出ることがなくなり、国民も「またか」の気持ちでやり過ごすようになった。北朝鮮侵略論を信じる者は時代遅れとすらいわれるようになっていった。

 金泳三政権時代から、北の権力者たちへの「傀儡(かいらい)」という呼び方が捨てられ、「金日成」「金正日」と呼ぶようになった。ほとんど閉鎖状態にあった北朝鮮情報が、小出しにされるようになり、常軌を逸した鬼畜集団と思っていた北朝鮮にも、同じ民族の血が流れる同胞たちがいるのだと、しだいに実感できるようになってきた。

 こうして、北への安心感が少しずつ根付くなかで、金泳三(キムヨンサム)政権下では国民の北に対する関心が急速に薄れていった。戦後、韓国思想の二本柱の一本だった「反共」がしだいに消え去り、「反日」だけを残すようになったのも、その頃からである。
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