北朝鮮の初期には、チュチェ思想はなく、あったのは中国に範をとった自力更生論だった。一九六〇年からの中ソ対立以降、北朝鮮は「自国の革命と建設は他国に頼らず、自国人民の力によって進めるべきだ」という自力更生の考えを強く打ち出した。そして六〇年代後半から、金日成が「思想における主体、政治における自主、経済における自立、国防における自衛」を主張し、チュチェ思想と呼ぶようになった。これは、マルクス・レーニン主義を自国の実情や条件に即して自主的に適用する、という立場からのもので、金正日はそうした考えがチュチェ思想の出発点にあったと述べている(前出「チュチェ思想について」)。