儒教の世界観に天国はない。そして、とくに貧困な者にとって現世に救いはないのである。現世に救いがあるとすれば、それは地上天国のイメージをもつところにしかない。北朝鮮社会主義がめざしたのも、金日成が「地上の楽園」といっていたように、地上天国の建設だった。
儒教にとってもチュチェ思想にとっても、現世こそが最善の世界である。人間は現世においてこそ、自分の完成に向かって進むことのできる自主的・主体的な能力の持ち主だからである。
その自分の完成とは、儒教でいえば聖人君子となることである。そして、自分の完成のために最も重要な手段は身に付けた高い教養である。