朱子学の、「理=法」を「気=物」に作用する超越的な実体とみなす理念主義は、マルクス主義の考えとよく似たところがある。マルクス主義では、社会を発展させる必然的な歴史法則があるとされる。もちろんこれは、現実超越的な実体とは考えられてはいないが、実際にはその必然的な歴史法則にのっとってあらゆる現実を理解し、対処していこうとする傾向が強く示されることになる。そこに共通してあるのは、みずからが考える「理=法」を正しいものとする排他的な絶対正義の観点である。
儒教国家李朝では、朱子学を学び修得した専門知識人たちが、国家を運営する高級官僚となる。北朝鮮では、高度な社会主義理論やチュチェ思想を学び修得した専門知識人たちが労働党を構成し、その幹部たちが高級官僚のポストを独占する。