朴正熙は、5・16軍事クーデタを起こした理由の一つを次のように語っている。
「大韓民国政府は樹立以来、利己的な党派闘争に明けくれ、援助金を浪費するなど腐敗の限りをつくし、貧困状態にある国民を省みないばかりか北朝鮮への呼応をみせるなど、国家を危機的な状態に陥れた」(『韓民族の生きる道』六二年三月ソウル/日本語版七〇年六月・鹿島研究所出版会)
そしてクーデタを起こしたもう一つの理由は、南北軍事衝突の危機回避にあった。
日本では、軍事クーデタ、軍事政権、戒厳令政権イコール悪という考えが一般的だと思う。しかしながら、開発途上にある諸国では、革命とか世直しとかは、ことごとくといってよいほど軍事クーデタによる軍事政権によって行なわれてきたのが現実である。