読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-2
kiji
0
0
1164286
0
ミッションの経営学
2
0
0
0
0
0
0
ビジネス
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
第1章 企業におけるミッションとは何か?

『ミッションの経営学』
[著]田中道昭 [発行]すばる舎


読了目安時間:39分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ


巷の解説書ではなかなかわかりにくいミッションの本当の意義


 ここ数年、ミッションという言葉を頻繁に目にするようになりました。もともとは外資系企業がマネジメントの概念として使っていましたが、最近では多くの日本企業も、自社のミッションがいかなるものであるかを鮮明に掲げ始めています。

 たとえばユニクロ、楽天など比較的新しい企業から、ダイエー、日本郵船、近畿日本ツーリストなど、日本を代表する老舗企業までがミッションを掲げています。

 ミッションとは、「使命」や「任務」と訳されます。「企業におけるミッション」とはすなわち、「企業の使命や役目」ということです。しかしながら、多くの企業はミッションの本質をほとんど理解しないままミッションを掲げ、形だけに終わってしまっているケースも少なくありません。

 あるいは、いまさらミッションなどと横文字にしなくとも、経営理念や企業理念という形で明らかにしている、という声が聞こえてきそうです。ただし私の目からみると、そういった企業理念や経営理念も、残念ながら本来のミッションの概念にまで高められているとは言えないものが多いのです。

 企業におけるミッションとは、その企業の果たすべき使命であり役目を明確にすること。そこからさらに企業が存在する意義は何か? 何のために自分たちは活動しているか? という根本的な命題に至ります。ここまで突き詰めて初めて、本来のミッションと呼べるものになります。

 ミッションとは企業の存在意義ですから必然的に普遍性、社会性を帯びた概念と言えます。顧客に対してはもちろんのこと、広く社会全体にとって自分たちの活動はどのような意味と意義を持っているのか? 翻って自分たちはそもそも何者であるか? 企業の存在の根本を問い、それを明確にしたものがミッションなのです。

 では、ここで皆さんに質問です。次のうち、ミッションと呼べるものはどれだと思いますか?


 A:「新規開拓を増やすことで、来期売上30%増を目指す」

 B:「我が社は業界のトップリーダーとなり、業界全体の活性化の責務を全うする」

 C:「我が社は商品を通じて顧客の満足と幸福に寄与し、新たな価値を創造することを目指す」


 まずAは営業目標や事業目標であって、ミッションと呼べるものではありません。競争に勝ち残ること、売上を上げて利益を出すことは、その会社における目標です。社会全体の中でどのような役割を持つか、自分たちの使命とは何かという視点がまったくありません。もちろん経営においてはこのような目標があってしかるべきですが、ミッションと呼べるものではありません。

 Bはどうか? 「業界全体の活性化の責務を全うする」というのは、企業の一つの使命を明らかにしたものと言えそうです。しかし、あくまでも業界内の話にとどまっている点が本来のミッションとするには物足りません。もっと広く、社会の中でどのような役割を果たすのか、どのような価値を提供するかという根本的な視点がなければミッションとは言い難い。

 ということで、この3つの中では、Cがミッションと呼ぶに最もふさわしいものです。売上目標や経営目標ではなく、自分たちの企業活動が顧客や社会に対して何を提供し何を実現するか、より普遍的で社会的な意義を明らかにしています。

 目標とミッションを混同してはいけません。企業理念やミッションとして掲げている内容も、じつのところ単なる経営目標に過ぎない会社も多いのです。

 私は、企業には二面性があると考えています。一つは売上を上げシェアを拡大し、成長しようとする利益追求の側面です。もう一つは雇用を生み出し、商品やサービスによって個人生活や社会を豊かにするという公益の側面。どちらも企業が存続するためには必要ですが、どうバランスを取るかが問題なのです。経営者の考えと判断次第で、どちらにでも転ぶのが企業経営だと思います。

 もしミッションが明確でなければ、資本と経営の性質上、会社は売上を上げ利益を出せばいい、お金を儲ければいいという、利益追求に傾きがちです。

 かつて「お金を儲けて何が悪い」と開き直った投資家がいましたが、自社の利益だけを追い求めることは、場合によって反社会的な行為を自ら容認することにもつながります。社員を酷使し、詐欺まがいの商品を顧客に無理やり売りつけるブラック企業と呼ばれる存在は、まさに利益追求の側面が産み落としたものだと考えられます。経営の利益追求の面、いわば我欲が前面に出てくるわけです。

 そのような企業でも、短期的には利益を得るかもしれませんが、早晩、顧客の支持を失い消えていくことになるでしょう。とくに最近はその傾向が強くなっていることは、後ほど詳しく述べるつもりです。

 ミッションを明確にすることで、企業が単なる利益追求だけでなく、公益をもたらす社会的な存在となる。

 顧客に何を提供し、社会に何をもたらすのか? 自社の利害の範囲を超え、普遍的で社会的な意義にまで高められたものをミッションと呼び、それがこれからの経営にとって必要だということを、この章で明らかにしたいと思います。

マーケティング3.0を可能にするミッションの重要性


 マーケティングの神様と呼ばれているフィリップ・コトラーが新時代のマーケティングとして提唱しているのがマーケティング3.0という概念です。このマーケティング概念において、コトラーはミッションの重要性を説いています。

 コトラーによると、マーケティングは、大きく3つの段階を踏んで発展していくと言います。

 まずマーケティング1.0は工業化時代。工場から生み出される大量の製品を顧客に一方的に売り込むマーケティングの段階を言います。この時代の製品は基本的で画一的なものが多く、いわゆる大量生産大量消費型。まず企業が作った製品ありき。それをいかに消費者に購入させるか。大量生産によって価格を下げることで、多くの購買者に購入を促すという、シンプルなマーケティングでした。

 次のマーケティング2.0の時代は、いまの情報化社会の中におけるマーケティングです。マスメディアが発達し、十分な情報を持つようになった消費者は、自らの嗜好と目的に合わせて製品を選択します。消費者の嗜好は細分化し、マーケティングはそれに合わせてより複雑な対応を迫られます。STPや4P、4Cの概念など、今日のマーケティングの基本的な概念が生み出されたのもこの段階です。


 マーケティング1.0が製品中心のマーケティングであったのに対して、マーケティング2.0は顧客志向のマーケティングだと言えるでしょう。顧客がどんな製品を望んでいるのかを分析し、それに対応した商品を作り売り込む。ただし、その顧客志向は、あくまでも企業が製品やサービスを、消費者にいかに購入させるかという一方的な視点に立っているもの。消費者は企業にとって受動的なターゲットであるという点では、マーケティング1.0と本質的に変わりがありません。

 それに対して、マーケティング3.0の時代が到来していると、コトラーは説きます。
この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:16270文字/本文:19165文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次