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敵国になり得る国・米国
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政治・社会
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第四章 「古い友人たち」はロビイストだった!

『敵国になり得る国・米国』
[著]青木直人 [発行]PHP研究所


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 キッシンジャー・コネクション


 キッシンジャー元国務長官は、第二次世界大戦中に、ドイツから移民として米国に渡って米国籍をとり、学者として実績を積みます。

 当時から、彼の財政スポンサーがロックフェラー・グループであることはよく知られています。彼とロックフェラーというと、とかく怪しげで陰謀論的な視点から語られがちですが、これはもう公的な事実であり、秘密でもなんでもありません。

 キッシンジャーは学者時代に、ロックフェラーからさまざまな資金援助を受けていました。そのため、ロックフェラー三世が一九六八年に共和党の候補として大統領選挙に名乗りを上げたときも、キッシンジャーはその選挙参謀を務めています。

 結局、予備選挙ではロックフェラーが敗れ、ニクソンが共和党候補に選出されて大統領になるわけですが、キッシンジャーはニクソン政権の大統領補佐官に任命され、ホワイトハウス入りして政治家に転身したのです。

 キッシンジャーと中国の最初の接触は、一九七一年の七月に中国を訪問したことから始まります。そして翌年の二月の歴史的なニクソン訪中を演出していきます。両国の間では国交の正常化は果たせなかったものの、「上海コミュニケ」という基本的な両国関係を相互確認した文書をまとめます。これが現在まで、なにかあると常に米中関係の基本的な準則になっています。

 ワシントンと北京の外交関係を見るときに大事なのは、キッシンジャーら和解に努力した政治的グループの発言力が依然として強力だということです。もちろん、彼らがいまも力を持っていることが前提なのですが、中国にトラブルが発生した際も、「歴史の証人」として、彼らの意見や立場を最大限尊重するという経緯があります。

 彼らキッシンジャーを中心にした政治的グループが、これまで目の届かないところで何をしていたのか、日本人には知られていません。それが分かっていれば、米中関係を単なるイデオロギー対立からだけで見たり、表面的な動向だけで判断することはなくなるでしょう。

 冷戦が終わり、中国が市場経済体制に本格的にシフトしたことで、米中二カ国には、安全保障上の対立点は多く存在していても、それだけではなく、同時に経済上の相互依存関係も強まりつつあるのが現実です。米中関係は、冷戦時代のような「対決」一本やりの関係ではありません。冷戦が終わり、中国経済が資本主義化している状態での関係なのです。
「対決」一辺倒は共産党政権を国際的に孤立させ、経済を危機に追い込みかねない。そうなれば、開放政策をきっかけにして、米国など投資国が中国に築き上げてきた権益が失われる事態にもつながりかねない。米国は一九四九年、中国に共産党政権が誕生した時にそういう体験をしています。

 仮に今後、中国の金融危機が発生した場合も、もはや西側は見て見ぬふりはできません。なぜなら、それは自分に跳ね返ってくるからです。いやだろうがなんだろうが、支援体制を組むことになります。それがグローバル化ということの意味なのです。

 キッシンジャーは、和解を仕掛けた単なる過去の「古い友人」ではありません。

 彼は、ニクソン政権の国家安全保障補佐官を皮切りに、フォード政権で国務長官を務めます。その後、民主党のカーター政権が誕生すると、政界の一線を退いて、ロックフェラー・グループの中核企業であるチェース・マンハッタン銀行の国際顧問に就任、在任中に築いた国際的な人脈を活用して、世界有数の国際金融ビジネスのアドバイザーとなるのです。

 加えて同じころ、これもまた米国最大の金融保険会社であるアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の国際顧問委員会の会長にも就任しています。同社の海外事業のアドバイス機関が、この国際顧問委員会なのです。

 チェース銀行やAIGは、中国市場を目指していた銀行であり、保険業界では米国でも最初に中国ビジネスと関わっているところです。

 彼らが中国の古い友人であるキッシンジャーに期待したのは、キッシンジャーが在職中に築いた小平ら中国首脳とのパイプでした。中国首脳らと親しい関係だと口添えがない限り、中国で特権的なビジネス待遇を手にすることは不可能だったからです。


 キッシンジャー・アソシエイツのすさまじい中国進出


 こうした世界的な多国籍企業の投資アドバイザーを経て一九八二年、キッシンジャーは自身で国際コンサルタント会社・キッシンジャー・アソシエイツを立ち上げ、会長に就任します。おりしも中国では趙紫陽首相らによって改革開放への歩みが始まったときでもありました。同社は中国ビジネスだけではなく、アラブやラテンアメリカとの仲介も行っていましたが、なかでも中国については圧倒的に強かった。

 具体的に言いますと、コカ・コーラです。キッシンジャー・アソシエイツの会員企業の一つですが、同社は清涼飲料水メーカーの中で最初に中国に進出したメーカーです。進出以来、キッシンジャーの助力もあり、中国政府の積極的な庇護(ひご)を受けて、中国全土に流通ネットワークを築き上げていきます。

 その結果、二〇〇七年現在、中国国内で販売される炭酸飲料の五〇%近くをコカ・コーラ社一社で独占しているのです。さすがに、中国政府高官の中から、こうした特定の外国企業が市場を寡占(かせん)している事態を危惧する声が、二〇〇六年の全人代の場で上がりました。「これでは我が国の民族飲料水メーカーは倒産してしまう」と。

 コカ・コーラだけではなく、先に名前をあげたAIGの中国マーケット支配もすさまじい。同社が中国に進出したのは、米国の保険会社のなかでは一番早く、キッシンジャーが中国を訪問し、中国首脳と会見する際、AIGのトップも同席して、中国指導者との顔つなぎをはかってきました。

 その結果、今では中国全土で最大の店舗数を誇るほど市場に食い込んでいます。実は世界各国の保険関係者なら誰でも知っている事実があります。それは保険分野について中国のWTO加盟交渉で最後までもめた点でした。

 一般には加盟にあたり、外資が参入する場合は出資制限があったのですが、AIGだけは加盟後も出資制限の適用を受けずに新しい支社を開設できたのです。また外国保険会社で最初に営業許可を取得するのは、一九八〇年から北京に事務所をおいていた日本の東京海上火災保険(現・東京海上日動)とみられていましたが、これも案に相違してAIGが最初に認可されているのです。関係者は異口同音にキッシンジャー・アソシエイツの強力なロビー活動をその理由にあげており、中国政府が古い友人のキッシンジャーに恩を売ったのだというのが真相のようです。

 政治力に守られたAIGは上海や広州など、沿岸部のニューリッチ層が集中している大都市に有力な店舗を構えています。地方政府や教育医療団体へのカンパも相当なもので、広告費ではトップクラスの『人民日報』にも「美国(米国のこと)国際集団」のものが頻繁に見受けられます。

 どこに営業所を認可するかは、中国政府当局者に一任されています。日本や米国のように、お金さえあれば、どこにでも出せるわけではありません。ビジネスに対する行政の介入権は圧倒的です。そこでものをいうのは政治力であり、人脈なのです。

 キッシンジャー・アソシエイツは、キッシンジャー元国務長官のキャリアとコネという巨大な政治力を膨大なカネに替えている企業なのです。
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