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敵国になり得る国・米国
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政治・社会
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第六章 くり返される「開放」宣言

『敵国になり得る国・米国』
[著]青木直人 [発行]PHP研究所


読了目安時間:22分
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 ゆらぐ「開放」の旗


 中国共産党の第一七回全大会(全国代表大会)が二〇〇七年の十月に開催されました。これは、第二期目(二〇〇七〜二〇一二年)を迎えた胡錦濤政権が、これまでの内政・外交の総括のうえに、今後五年間の新しい方向性、方針を打ち出すための大会でした。

 大会の最大の焦点は、成長にともなって噴出する国内外のさまざまな問題や諸矛盾を、どういう形で解決していくのかという点にありました。これに対して、共産党が明確な方針を出せたかどうかということが最大の問題でした。

 結論から言いますと、大会の開幕当日に出た「決議」(開催前に行われる事前会議で作成される会議の総括文書)の内容は不十分で、単なる政策のスローガンだけがくり返されているような印象があります。もっと具体的に言えば、いま現在、国内で噴出している問題に、なにも具体的な回答を与えていないのです。

 国民と一口で言っても、いまやインテリや都市の自由業者、あるいは資本家や農民、さらには農業経営者など、職種も階層も多様です。毛沢東時代のように、農民と労働者という単純化された社会ではありません。社会科学院の分析によれば、いま中国には一〇の階層が社会に存在しています。具体的に上から順番に紹介すると、国家の管理者、大国有企業の社長、私営企業のオーナー、専門技術者、事務要員、個人経営商工業者、商業サービス分野の従業員、国有企業の労働者、農民、都市と農村の無職失業者・半失業者、となります。

 は高級国家公務員、つまり政府の役人のことです。いまや労働者と農民は社会の最下層に位置づけられています。このレポートは最終的に当局に公開を禁じられました。影響が大きすぎるからでしょう。

 しかし、逆にここまで国民の階層格差が進んでいるのに、中国共産党は依然として多党制を認めずに、一党独裁体制に変更もありません。また、いまでは資本家の入党まで積極的に認めるようになっています。その結果、共産党は、一三億の全国民に奉仕する政党に変貌しているのです。

 共産党は、かつてのような労働者、農民の利益を守るだけの単純な階級政党ではありません。国民政党となり、党内に存在するさまざまな社会集団間の対立や利益の調整を一手に引き受けざるを得なくなった。その結果、噴出するあらゆる社会矛盾に対して、明確にこれを解決するための方向性が出にくくなっています。全ての階層の利益を擁護することは事実上できないし、中途半端で折衷(せっちゅう)主義的な政策になりがちです。

 一七回大会がまさにそうでした。「決議」の中で、くどいくらいに「改革開放政策は今後も引き続き続ける」という主張がなされています。しかし、山ほどある解決課題と諸問題はそもそも、改革開放政策の中で生まれたものです。しかし新しい矛盾にどうメスを入れ、どう対応していくのか、どう問題に決着を付けていくのかという論争は「決議」の中に一切出てきません。

 なぜか。私は、いまや共産党の内部のさまざまな階層グループや地域勢力の間の多面的な利害の調整が、相当困難になっているのだと考えています。矛盾にメスを入れ、諸問題を解決しうるだけの絶対的なリーダーシップを胡錦濤政権はいまだに持ちえていない。彼は本質的に単なるバランサーにすぎないのではないか。

 江沢民時代の成長一本やりの政策は、腐敗の蔓延、拝金主義、環境汚染など、ゆるがせにできない問題を残したままです。当然、明確な政策転換が必要で、現政権はそれをわかっていて「和諧社会(調和のとれた社会)」を口にはする。しかし、大会では党内の融和と安定を最優先したため、具体的な対応策は出ないまま、改革開放を続けると原則論しかいえない――。だとすれば、これは危うい。社会矛盾は高まり、インフレが本格化しています。それでいて党内は経済政策をめぐって喧々囂々(けんけんごうごう)で強力な政策がでてこない。これはあの天安門事件前夜の状況とそっくりなのです。
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