◇景気回復の二重構造
百年に一度の世界同時不況。一九九一年のバブル経済崩壊から立ち直りつつあった日本経済を十七年目にして襲った経済恐慌である。二〇〇八年から二〇〇九年にかけて、政治はすべて景気回復にエネルギーを注いだ。といっても、民需の元気のなさを国債の大増発により官需が補う景気対策だ。公共投資の乗数効果はほとんど期待できない中での大型投資である。残ったのは大借金、後に大増税というシナリオがみえてくる。
かりに大都市地域が景気回復しても、その恩恵に浴さない恵まれない地方都市もある。過疎は止まらず、地価は下落し、中心市街地の空洞化が著しいところも多い。地域にも勝ち組、負け組がはっきりしている。数では不況と負け組のほうが圧倒的に多い。
こうした現象を景気の「二重構造」と呼ぶことができよう。大都市と勝ち組だけをみて不況を脱したというのは、政治の独りよがりである。将来の雇用不安にあえぐ人々も後を絶たない。景気が明るくみえるのは、湯水のように注ぎ込む借金財政による「官需経済」の下支えがあるからに過ぎない。しかしこうした政治手法に不安を抱く人々も増えている。〇九年夏の政権交代はそうした政治手法への転換を求めたものである。
平成不況がピーク時の一九九八年に一五兆円もの公共事業費がつぎ込まれたが、現在はその半分の七兆円そこそこだ。