◎──将来を洞察する力を養う
『沈黙の春』は、一つの寓話から始まる。(以下は『沈黙の春』レイチェル・カーソン/青樹簗一訳 新潮社を参考とした)
ある年、春が来ても、自然は黙りこくっていた。沈黙の春だった。鶏は卵を産んだが雛は孵らず、子豚が生まれても二、三日で死んでしまう。林檎の木はあふれるばかり花をつけたが、ミツバチの羽音もせず、静まりかえっている。花粉は運ばれず、林檎はならないだろう。生き物の姿もなく、沈黙が支配するだけ。小川からも生命の火は消えた。今は釣りに来る人もいない……。
一九六二年、レイチェル・カーソンは『沈黙の春』を発表し、合成殺虫剤、除草剤の使用がもたらす生態系の乱れを警告した。