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政治・社会
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第二章 米大統領選と日本

『主張せよ、日本』
[著]古森義久 [発行]PHP研究所


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米大統領選から見える日本の存在の軽さ




米大統領候補者たちの対日観


 アメリカ大統領選挙はますます熱気を高めてきた。首都ワシントンで見ても、これでは超大国の政治機能がストップしてしまうのではないかと(いぶか)るほど、国政の関心は大統領選キャンペーンに集中してきた。

 マスコミの報道がまたものすごい。大統領選の投票がもう来週にでも切迫したかのような大々的な報道が連日である。

 実際には投票は二〇〇八年十一月上旬なのだ。共和、民主両党が最終的に指名候補を決める全国党大会は八月末から九月はじめにかけてだが、その半年も前の予備選で、すでに熱気の高まりは大変なものだった。

 とくに民主党側のヒラリー・クリントン、バラク・オバマ両候補の激突が火花を散らす様子はすごかった。

 これだけの熱っぽい関心がこんな早い時期にエスカレートした理由の一つは、民主党側の争いのドラマ性だろう。女性候補、黒人候補と、いずれもキャラクターが異色だった。クリントン、オバマ両氏のいずれかが民主党の大統領候補に指名されたとしても、アメリカの政治の長い歴史のなかで初の女性、あるいは初の黒人となるからだ。

 共和党の側は、当初の予測よりずっと早くジョン・マケイン上院議員の指名が確実となってしまった。

 マケイン候補もさまざまな特色のあるベテラン政治家だが、大統領候補としての意外性やドラマ性は少ない。本番選挙での共和、民主両党の正面対決でマケイン候補が発揮しうる強さは別として、現段階ではその着実さ、堅実さ、そして長い政治歴が、新しさ、珍しさに満ちた民主党側の激戦へのハイライトをさらにあおる効果をも増しているようだ。

 日本でも今回のアメリカ大統領選挙への関心は異様なほど高い。これまたその理由の一つは、民主党側の主役のドラマ性だろう。

 しかし、この激しい候補選びがどんな結果に終わろうとも、アメリカの大統領選挙の帰趨(きすう)は日本にとって超重要な意味を持つ。アメリカは世界唯一のスーパーパワー、そして日本にとって当然ながら唯一の同盟国である。そのアメリカの新大統領にどんな政策を持つ、どんな人物が就任するかは、日本にとっても重大な関心事となる。

 だからこそ、二〇〇九年一月にホワイトハウスの新たな主となる政治指導者が日本に対してはどのような認識、思考、そして政策を持っているのか、あるいはいないのかは、日本側にとってずしりと重みを持つ大テーマである。

 大統領選挙の段階で大統領になりうる有力候補たちがどんな対日政策を持っているのか、知っておくことの意義は大きい。

「日本」は話題になっていない


 ここではひとまず予備選にさかのぼり、民主党側のヒラリー・クリントン、バラク・オバマの両候補にしぼって、その対日認識などを探ってみよう。「アメリカ大統領選と日本」というとらえ方だと見てもよい。そのとらえ方があまりに「日本」にこだわる自己中心的に映ったとしても、日本側としては一度はきちんと押さえておかなければならない命題である。クリントン候補はすでに予備選で敗れたとはいえ、その政策は吟味に値する。

 しかし、まずその前に報告しておかねばならない点がある。それは今回のアメリカ大統領選挙キャンペーンでは、日本や日米関係は争点にはなっていないという事実である。

 この現実は日本にとって必ずしも悪いことではない。アメリカの国政の場でも、国民一般の水準でも、日本はいまあえてその対策を論じなければならない課題とも問題ともなっていないということである。日米両国間には、いまアメリカ側の大統領候補たちが真剣に議論しなければならないような切迫した問題はないということだ。

 この現状は一九八〇年代の日米貿易摩擦が激しかったころにくらべれば、ずっと好ましいとさえいえる。

 思えば、アメリカの大統領選で日本が争点になるというのは在米日本人にとっても快適な現象ではない。とにかく日本への非難や糾弾がキャンペーンの最中に激しく述べられるのだ。候補者たちが「日本叩き」に等しいとげとげしい対日批判を表明するのである。

 たとえば一九八四年の大統領選挙では、時の民主党候補ウォルター・モンデール氏が次のような言葉をことあるごとに述べていた。しかも熱を込め、明らかに日本への非難の言辞として述べるのだった。

「現在の共和党レーガン政権の対日政策が続けば、次世代のアメリカ国民はみな日本人所有の工場で働き、床の掃除をすることになってしまう」
「アメリカ製品を日本に売り込むには、米軍部隊を製品と一緒に上陸させなければだめだ」


 最初の言葉は、日本のアメリカへの経済進出に対する警告だった。日本の対米投資、企業買収などの拡大を許せば、日本企業がアメリカ国内に工場を多く所有し、一般アメリカ人はその工場に雇われて、床掃除のような単純労働をやらされるようになる──という注意の喚起なのだった。

 後の言葉は、日本市場の閉鎖性への批判だった。日本の市場は閉鎖されており、アメリカ製品は普通の方法ではその市場に入れず、米軍部隊が出動してのこじ開けが必要になる──という意味だった。

 この時代は、アメリカにとって「日本」はこれほど巨大なテーマであり、これほど深刻な問題を起こしうる論議の的だったのだ。

 こういう時代にくらべれば、いまの日米関係はずっと平穏である。だから大統領選挙の一連の討論や議論でも、日本がテーマになることはまずないといえる。共和党候補も、民主党候補も、「日本」は気持ちのよいほど、まったく話題にはしない。むしろ逆に日本の無視や軽視が目立つほどである。

 しかし、日本が話題にならないからアメリカにとって日本は意味がなくなった、ということではない。トラブルがないから話題にならないだけ、という側面もあるのだ。

 たとえば、イギリスはアメリカにとって超重要な同盟パートナーである。だがイギリスはアメリカの選挙戦でまったく話題にはならない。米英関係がいつも円滑に機能しているからだろう。だから、日本が話題にならないのは日米関係が円滑に機能している証左だという側面もあるのである。

 かといって、各候補の対日姿勢の探索が不必要というわけではない。どの候補でも、もし大統領になれば、必ず日本への一定の政策は打ち出してくる。どんな場合でも、アメリカにとって日本は重要な同盟国なのだ。貿易でも最大級の相手国である。その重要な国に対し、なんらかの政策がないはずがない。

ヨーロッパ・インドを重視する民主党のヒラリー


 さて、ヒラリー・クリントン候補の対日姿勢からまず眺めよう。

 最大の手がかりとなるのは、やはりみずから発表した外交政策論文である。クリントン候補は昨年十月、大手外交政策雑誌『フォーリン・アフェアーズ』に「二十一世紀の安全保障と機会」と題する論文を掲載した。この論文では、クリントン候補がもしアメリカ大統領となった場合に外交政策をどう進めるかの概略を述べていた。

 この論文は、自分が超大国としてのアメリカの大統領となった場合に「大統領としての私は──」という前提の政策表明だから、大量破壊兵器の拡散防止やテロ対策からイラク政策、北朝鮮核兵器開発への対応、多国籍機関の国連などへの政策など、広範な領域を論じていた。グローバルな角度からアメリカの対外関与のあり方を語っていた。

 しかし、このクリントン論文は驚くべきことに、長文を費やしても、日本だけへの正面からの言及はなにもなかった。日米関係や日米同盟について、具体的にも、抽象的にも、とにかくなにも述べても触れてもいないのだ。

 だから、この論文は日米関係や日本を無視した、と特徴づけても不正確にはならない。

 では、同論文の内容を具体的に点検してみよう。

 このクリントン外交政策論文はほぼ最終の部分で「同盟を強化する」という題の一項を設け、まずヨーロッパとの関係の重要性を説いていた。
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