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主張せよ、日本
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政治・社会
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第三章 日本よ!「普通の国家」たれ

『主張せよ、日本』
[著]古森義久 [発行]PHP研究所


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日本が嫌いな『朝日新聞』
──若宮啓文・朝日論説主幹の「風考計」から見た『朝日』の体質




『朝日新聞』は“非民主的な思想警察”


 日本も小泉政権から安倍政権にかけての数年間、やっと戦後のハンディキャップ国家を脱却して、普通の民主主義国家へと着実に歩み始めた。
「普通の国家」とは世界の他の諸国並みの国家という意味である。他の主権国家と同じ要件を満たすようになる、ということだ。とくに安全保障の面で国際社会での特異で異端の存在から、他と同じ普通の存在になるということである。自国にとっての脅威があれば、それに備える安全保障上の措置をとる。とれなくても、少なくとも、とることに努める、ということでもある。そのための法律や制度を整えることが当然の前提となる。

 北朝鮮が核兵器を開発し、爆発させ、ミサイルを乱射し、中国が大規模な軍拡を続け、日本領海に潜水艦を侵入させてくれば、日本という国の安全を保つために、なんらかの対応策を考える、というのが「普通の国」の安全保障政策の最小要件だといえる。国際的に見て、ごく普通で自然なことである。

 しかし日本をそもそも潜在的、顕在的に敵視する中国のような存在の視点からは、日本の「普通の国」志向も「危険な軍国主義復活」となる。

 日本側の一部勢力も同様に見る。日本は普通の国になってはならず、いつまでも他者依存、しかも自国の存亡に関して幻のような「他国の善意」に頼るという例外的な存在に留まらねばならない、と主張する。

 この一部勢力にかかると、「普通の民主主義国家」になる道への前進も、戦前の危険な軍国主義や侵略への復帰と断じられてしまう。日本を普通の国にしようと唱える人間さえも、危険なテロリスト扱いされてしまう。普通の国への前進を提案する言論も、他の言論への弾圧というレッテルを貼られてしまう。こんな非民主的な思想警察の役割を演じる勢力の代表が『朝日新聞』である。

 この『朝日新聞』の詐術的なレトリックの虚構や虚偽をあばいてみよう。『朝日新聞』では、その言論を代表する若宮啓文論説主幹(当時。二〇〇八年四月より東京本社編集局編集委員・同社コラムニスト)の種々の主張が、検証の対象としてはもっともふさわしいだろう。同氏はその種の「虚」のレトリックの象徴例に満ちたコラム類を一貫して書いているからだ。

 さて、一連の若宮論文を批判的に取り上げるにあたって、一言、述べておきたい。それは私には若宮氏個人への悪意や敵意はまったくないという点である。

 氏とはこれまで個人的にも面識がある。氏は紳士であり、私にも礼儀正しく接してくださり、こちらも相応の対応をしてきたつもりである。この場で取り上げ、批判や非難をするのは、あくまで若宮氏の言論であり、その政治的な主張にすぎない。若宮氏の公的な言論を私も公的な言論活動の一環として論評する、ということである。

論敵の悪魔化


 若宮氏は『朝日新聞』に「風考計」というコラムを定期的に書いてきた。このコラムを論評の主対象としたい。

 二〇〇六年十二月二十五日付朝刊に載ったこのコラムの最近回──どうやら最終回ともなるそうだが──は、「言論の覚悟」「ナショナリズムの道具ではない」という見出しの主張だった。見出しからもわかるように、若宮氏側の言論に異議を唱える言論を「ナショナリズムの道具」と断じ、危険扱いする内容だった。

 若宮氏はこのコラムの冒頭で以下のように書く。いちどきの引用としては長すぎるかもしれないが、この部分に若宮流虚構のエッセンスが盛り込まれているので、あえてそのまま紹介しよう。




 教育基本法に「愛国心」が盛り込まれ、防衛庁が「省」になることも決まった日の夜だった。
「キミには愛国心がないね」

 学校の先生にそうしかられて、落第する夢を見た。

 いわく、首相の靖国参拝に反対し、中国や韓国に味方したな。

 卒業式で国旗掲揚や国歌斉唱に従わなかった教職員の処分を「やりすぎ」だと言って、かばったではないか。

 政府が応援するイラク戦争に反対し続け、自衛隊派遣にも異を唱えて隊員の動揺を誘うとは何事か。

 自衛隊官舎に反戦ビラを配った者が75日間も勾留(こうりゅう)されたのだから、よからぬ記事を全国に配った罪はもっと大きいぞ、とも言われた。「そんなばかな」と声を上げて目が覚めた。
(中略)思えばこの間、社説ともども、小泉前首相や安倍首相らに失礼を書き連ねた。夢でよかったが、世が世なら落第どころか逮捕もされていただろう。




 以上の記述で若宮氏が伝えようとするのは、自分たちの言論に反対する側は「落第」とか「逮捕」という物理的な不当行動で弾圧をしてくるという示唆である。

 自衛隊のイラク派遣など一連の対象への反対に加えて、「小泉前首相や安倍首相らに失礼を書き連ねた」として、その言論活動のゆえに「世が世なら……逮捕もされていただろう」と書く。つまりは自分の夢に名を借りた狡猾なレトリックでの「言論活動のゆえに逮捕」という喧伝がミソである。

 しかし現実には若宮氏や『朝日新聞』の主張が言論であると同時に、その主張に反対する側の主張もこれまた言論なのである。だが若宮氏は、自分の言論に反対する側の言動は、夢を使っての「逮捕」という比喩で弾圧や暴力として描こうとするのだ。

 政府が教育基本法をつくることや、自衛隊をイラクに派遣することは、いずれも言論ではなく、実際の行動ではある。だが民主主義の国家や社会が民主的な手続きを経てとった措置である。つまりは国民多数の意思を体した措置だといえる。

 その措置に賛意を表することは、『朝日新聞』の主張とまったく同次元の自由な言論である。同時に『朝日新聞』のその「反対」の主張にさらに「反対」を述べることも、これまた自由で民主的な言論なのだ。

 だが若宮氏は自分たちの言論に対する言論や意見の表明を言論以外の不当な弾圧のように描いていくのである。

 前述の若宮コラムの続きを紹介しよう。若宮氏はそこで、戦前の新聞が当局からの弾圧を受けた事例を挙げながら、現在の日本について次のように書く。




 現代の世界でも「発禁」や「ジャーナリスト殺害」のニュースが珍しくない。

 しかし、では日本の言論はいま本当に自由なのか。そこには怪しい現実も横たわる。

 靖国参拝に反対した経済人や天皇発言を報じた新聞社が、火炎ビンで脅かされる。加藤紘一氏に至っては実家が放火されてしまった。言論の封圧をねらう卑劣な脅しである。

 気に入らない言論に、一方的な非難や罵詈雑言を浴びせる風潮もある。それにいたたまれず、つい発言を控える人々は少なくない。この国にも言論の「不自由」は漂っている。




 若宮氏はここで自分たちの言論に反対する側の言動をもっぱら「戦前」の軍国主義や弾圧と結びつける一方、現代では「火炎ビン」や「放火」というテロ行為に結びつけるのである。

 実際には『朝日新聞』の主張に反対する側の主張も──私自身の主張も含めて──自由な言論に過ぎない。だが若宮氏はそれをテロや戦前の弾圧と同種に描こうとするのである。

 この言葉の詐術は「悪魔化」だといえる。自分の嫌いな相手をまるで悪魔のような悪の存在とする虚像を描くことである。英語では「demonize」と表される。つまり特定の相手をデモン(悪魔)に擬してしまうことだ。実在しない悪魔を実在するかのごとくに描くのである。

 若宮コラムの以上のような特徴を、まず第一に「論敵の悪魔化」として挙げておこう。

 じつはこの「悪魔化」は『朝日新聞』の論調の一貫した特徴でもある。二〇〇三年元旦の社説には北朝鮮による日本国民拉致に関連して、以下の記述があった。




 同胞の悲劇に対してこれほど豊かに同情を寄せることができるのに、虐げられる北朝鮮民衆への思いは乏しい。ひるがえって日本による植民地時代の蛮行を問う声は「拉致問題と相殺するな」の一言で封じ込めようとする。日本もまた「敵に似てきている」とすれば危険なことである。




 ここでの「敵」とは北朝鮮のことである。つまり日本が北朝鮮に似てきた、というのだ。日本国内で『朝日新聞』の言論への反対が出ることをもって、「日本が北朝鮮に似てきた」というのである。

 日本の中での拉致問題の重要性を強調する意見を北朝鮮になぞらえるとは、まさに「悪魔化」といえよう。まるでいまの日本には悪魔が跳梁(ちょうりょう)するかのような牽強付会(けんきょうふかい)のゆがめレトリックなのである。
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