「アメリカは分裂し、国家のアイデンティティを失う」
サミュエル・ハンティントン(ハーバード大学教授)
アメリカ南部諸州の代表とされているアラバマ州は、アメリカ南部でも奥深く、地理的にはフロリダ州のすぐ隣にある豊かな農業州である。NHK時代に黒人差別団体の「クー・クラックス・クラン」を取材するためバーミングハムを訪問したことがある。かつては鉄鋼業で栄え「南部のピッツバーグ」と呼ばれた町で、古びた建物がたくさん残っていた。
アラバマ州には黒人弾圧の長い歴史がある。マーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師が、公民権運動を始めた土地としても知られている。このアラバマ州が二〇一四年三月二十一日、大統領選挙の投票には写真つきの身分証明書が必要であるという規則をつくり、次の選挙から実施すると発表した。
アメリカでは選挙の不法投票がこれまでもたびたび問題になり、ここ数年は「投票場では写真つきの身分証明書を提示させるべきだ」という声があちこちで聞かれるようになっている。