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中国任侠列伝
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歴史
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六 林爽文 天地会

『中国任侠列伝』
[著]島崎晋 [発行]PHP研究所


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 林爽文(りんそうぶん)は役人を嫌いぬいた男である。

 林爽文は乾隆一二(一七四七)年、福建省(しようしゆう)府の平和県に生まれた。州府は、東は海峡をはさんで台湾と向かい合い、南は広東省に接する、福建省最南端の地である。

 前章でも記したように、福建というところは山が多く、田畑として使える土地が少ないため、つねに人口過重状態にあった。そのため、早くから海外をめざす者が多かった。

 (みん)の滅亡後、(しん)朝が遷界令(せんかいれい)を出したこともあって、一時期移民の波は途絶えるが、(てい)氏の降伏とともに再び台湾への移民が、とくに福建南部の住民の間で盛んになる。林爽文の家も、このままではやっていけないというので、乾隆三八年、一家こぞって台湾中西部の彰化県大里杙荘(だいりよくそう)に移住した。大里杙荘は彰化の県城から約一六キロ離れたところにあり、人口約一万人。住民は全員州の出身者で、ほとんどの者が林姓を名乗っていた。

 林爽文は、最初は荷車引きをして家計を助けていたが、その後、彰化県の役所で捕役(ほえき)(捕り手)をつとめ、そこを首になってからは再び荷車引きをしたり畑を耕したりして生計を立てた。

 彼は決して素行のいい人間ではなく、好んで無頼の徒と交わりを結び、よく盗みも働いた。捕役をつとめていた時も、役人や胥吏(しより)(現地採用の非公式の小役人)、差役(さえき)(雑用係)らとぐるになり、不正な金けなどにも手を染めていたという。当時の記録にも、
「爽文は生まれながらに陰険狡猾(いんけんこうかつ)で……」

 とか、
「無頼と結び、盗みを働いて()となった」

 といった記述が見られる。

 ならば、世の鼻つまみ者であったかというと、そうではなく、史書に、
「平日、賊をなし、賊をかくまい、銀銭を得ると人を幇助(ほうじよ)した。このために、人は多く彼に服した」

 とあるように、彼は義心にあつく、慷慨(こうがい)の気に富むことで知られた人であった。困っている人がいれば進んで援助の手を差しのべ、同郷の人間で獄につながれた者があれば金銭を惜しまず援助したので、郷里ではいたく尊敬されていたのだ。

 一見、矛盾しているようにも思えるが、当時の社会は無法者=悪人と、単純に割り切っていえる状況にはなかった。移民社会のような厳しい世界ではなおさらだ。清廉で品行方正な役人が皆無に近く、役人の言いなりになっていたのでは生命、財産が守れない世の中であれば、人びとは、多少の問題には目をつぶり、それなりの実力と気概のある人間に頼らざるをえない。かくして、林爽文のごとき任の徒に人望が集まることになったのである。

 おそらく林爽文は県の役人らとぐるになりながらも、決して気を許してはいなかったであろう。利害の一致から手を組んだにすぎず、いかにも親しげに金けの話をしながらも、
(とことん腐りきった連中だ。今に見てろよ)

 という思いでいたにちがいない。

 乾隆五一年、その林爽文が、ある秘密結社を率いて反乱を起こす。秘密結社の名は天地会(てんちかい)。いったいそれはどのような結社だったのだろうか。

 清朝時代の秘密結社の特徴を簡潔に表わす、「北の教門(きようもん)、南の会党(かいとう)」という言葉がある。華北(かほく)には○○教とか○○門と名乗る邪教集団が、華南(かなん)には○○会とか○○党と名乗る秘密結社が多いという意味だが、このうち会党には、青幇(チンパン)洪門(こうもん)の二大系統があった。

 洪門は洪家(こうけ)紅門(こうもん)洪幇(ホンパン)紅幇(ホンパン))、漢留(かんりゆう)などとも呼ばれ、このなかでもまた二つの系統があった。一つは長江流域に広まった哥老会(かろうかい)、もう一つが東南部に広まった天地会である。

 天地会の語り伝える起源伝説によれば、同会は「反清復明(清王朝を倒し、明朝を復興させる)」を目的とする革命団体であるという。
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