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はじめに

『伝わる化』
[著]大塚寿 [著] 姥谷芳昭 [発行]PHP研究所


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 ほとんどのニッポン人が、なんだか「伝わらない……」という実体験をしているに違いない。四千年前の古代エジプトの遺跡から「いまの若者は……」と書かれたパピルスが発見されたのは有名な話だが、そこにも「彼らが何を考えているのかわからない」「われわれの想いが彼らには伝わらない」という文脈が見てとれる。


 現在の日本企業は、そんな半分ジョークのようなエピソードでは片づけられないほど深刻な状況にある。


 ・新卒の三分の一が三年以内に会社を辞める

 ・指示がないと動けない社員が急増し、職場が思考停止状態になっている

 ・健康保険支出の第一位が社員のウツ病治療という業界が出現している


 複雑な要因、因子が複雑に絡み合ってそのような現象が起こっているのだろうが、問題の本質はどうも……、


 ・社内での対人関係、あるいは営業、販売、接客などの対外的な対人関係ストレス

 ・想いが伝わらない、方針が伝わらない、熱意が伝わらない、ベネフィットが伝わらない、ニュアンスが伝わらない……という“伝わらない症候群”

 ・一対一、一対数名、一対多数、一対数階層のコミュニケーションのあり(よう)


 のあたりにあることがわかってきた。解決策はもっとわかりやすい。「伝わらない」状況を三〇パーセントでもいいから「伝わる」状況に改善するだけで、状況は一変する。

 本書はその方法論を“上から目線”の観念論ではなく、現場目線の事実としてお伝えしたい。

 それにしても、いつの間にか、職場から“声”が消え、喫煙室に先端情報が集まるというおかしな職場環境となってしまった。いったい“声”はどこに行ってしまったのだろうか。

“KY”という造語が流行語となるように、ビジネスパーソンのみならず中高生、いや小学生まで“空気”を読むことが求められる私たちニッポン人にとって、欧米流のマネジメント手法は副作用も多い。コーチング、メンターシップ、ファシリテーションなど、どれもすばらしいコンセプトだし、「なるほど!」と思えることも少なくない。だが、同じフロアで、しかも声が届く場所にいる上司からメールで指示が届くのはいかがなものか。

 そもそもメールでは“空気”と“温度”が伝わらない。あるいは、営業部隊に導入されたSFA(セールス・フォース・オートメーション)に営業日報を入力したところで、顧客の課題が営業パーソンに伝わっているかどうかは判断できないし、上司は部下が何に行き詰まっているのかさえつかめない。

 この十数年間、企業を取り巻く環境が大きく変化し、洪水のようなITやマネジメント手法の進化にさらされるなかで、私たちニッポン人は何か大切なものを置き去りにしてしまったのではないだろうか。


 本書では、まず日本企業の職場で起こっているさまざまな現象をとりあげ、その要因を分析するとともに、実践として成果をあげた方法の数々を紹介していきたい。その目的は、ずばり“あなた”を、そして“ニッポンの職場”を元気にすることであり、もっと正確に表現するなら、そこで働く人々にもう一度、あの熱い元気を取り戻していただくことにある。

 すべてが、みなさんの職場で、いま起こっている不機嫌な(ヽヽヽヽ)問題を解決するための処方箋(しよほうせん)と特効薬であることを祈りつつ、企画を練った。


 私の本業はオーダーメードの企業研修の設計・実施であるために、必然的に当該(とうがい)企業や組織が直面する問題や課題に日々とっぷりと()かっている。また、企業や団体の講演に呼ばれることも多いので、それらの課題が具体個別ではなく、多くの企業に共通していると実感することもしばしばだ。

 出自(しゆつじ)が(株)リクルートのどぶ板営業パーソンということで、これまで数万社というレベルで企業にアプローチし、数千社を訪問している。実際に受注したのは独立後も含めて数百社のレベルであるが、日本最大の企業から従業員二五名の企業に至るまで、規模においても、業種においてもほぼ全種を担当させていただいたと自負している。

 米国へのMBA留学も、日本企業やニッポン人を客観的に見られたこと、欧米の経営手法に(なま)で触れ閉口するほどに叩きこまれたこと、そして伝えたいことが伝わらない日々を送ったことなどが本書のコンテ作成に役立った。


 しかし、私のキャリアというのは営業畑、マーケティング畑であるため、営業、販売まわりのコミュニケーションには強いが、全社規模の社内コミュニケーション実務の経験が(とぼ)しい。実務経験が薄いとどうしても説得力のない、青臭い観念論に終始してしまいがちなので、そこを補ってくれる強力な助っ人が、本書の共著者の姥谷(うばたに)芳昭氏である。


 彼と私は(株)リクルート、一九八六年入社の同期で、当時の社員寮であるつつじヶ丘寮でも一緒だった。つまり同じ屋根の下に住み、同じ釜の飯を食った仲なのだが、彼は入社して九二年に退職するまで一貫して総務畑を歩んだ。

 当時、リクルートではスタッフ部門の配属であっても全新入社員に三カ月の営業研修が課せられていた。たしかに“研修”という名はついているが、各営業現場に配属され目標数字(予算)も持つ、バリバリの営業の仕事である。

 その研修期間に姥谷という存在は伝説となった。彼の名はまったく別事業部の私のところまで鳴り響いていた。
「モーニング・ダイバー」というのが、彼のあだ名だ。モーニング・ダイバー、「朝、(もぐ)る人」? つまりは朝、正確には「早朝に企業に飛び込み営業する人」である。もっと正確に言いうと、早朝に企業の経営者や役員を待ち構え、営業することだ。

 朝六時前に寮を出て、七時前には出社。そこで朝一番に『日本経済新聞』『日本経済産業新聞』の求人欄を開いて、目ぼしい企業の経営者、役員に会うために、飛び込みで七時半には受付に並ぶのだ。

 彼はその方法で名うての企業からポンポン受注をあげた。それも新人研修の三カ月の間に、だ。

 また、彼は低迷する営業所の先輩を叱咤(しつた)し、八時半スタートだった朝会の開始を七時四十五分にすることをマネージャーに直訴(じきそ)するなど、ある意味、非常に奇妙な新人だった。


 その後は総務に戻り、スタッフワークを続けたが、“らしさ”は再び復活する。何を思ったか
農業を志し、一九九二年に退職。就農のため、全国の数百の自治体に手紙を書いたところ、三〇通の返事が戻る。ワンボックスカーに生活用品を詰め込み、その三〇の自治体を訪ねる放浪(ほうろう)の旅の末、奥飛騨(おくひだ)で農業を始めた。

 もろもろの紆余曲折(うよきよくせつ)の末、農業を断念し、東京に復帰。現在はリクルートの総務部のメンバーたちが創業した(株)ゼロインという会社の副社長として数々のプロジェクトを成功させている。


 リクルートの同期で、寮が同じであるばかりでなく、この農業というか第一次産業経験も私たちは重なる。
『リクルート流』という拙著の「あとがき」でも紹介したが、私はMBA留学の資金を稼ぐためにリクルートを退職し、二年強ヤマメの養殖をしていた。さらに創業資金をつくるためにクリスマスツリーを植林したものの、バブル崩壊とともに挫折した経験を持つ。

 そんな共通体験というか、ビジネスキャリア上の“変わった体験”も共有している。私たち二人を知る別な同期に言わせれば、「同期六二〇名の七大変人の中の二人」ということになるかもしれないが、私たちの体験や生み出したものが、みなさんの「伝わる化」を推し進め、「不機嫌(ふきげん)な職場」を一掃(いつそう)する一助となれば幸いである。


 末筆となるが、この「伝わる化」を企画段階から応援し、編集の労をとってくださったPHP研究所学芸出版部の白石泰稔編集長、細矢節子さんにこの場を借りて深謝したい。


 二〇〇八年七月
大塚 寿 
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