ドリスとの出会い
不法移民はみな貧乏で搾取されている、というわけでもない。世界はそういうように単純に白黒では分けることはできない。貧乏移民は、もともと、母国でも貧乏である。しかし、もっと超貧乏人の人間は移民になることすら難しいはずだ。貧乏移民になるには、それなりの経済力が必要なのである。
また、国では生きていけないわけではないけれど、アメリカではもっと稼げるという理由でやってくる人もいる。こういう人々は、母国での絶望的な状態から脱出するためにアメリカに決死の覚悟で渡ってくる人々と同じではない。移民の経済状態には個人差があり、また、「国家差」がある。メキシコ移民やプエルトリコ移民は一般に貧しい人々が多いが、ブラジルからの移民は超貧乏というわけでもない。
ドリスはブラジルの地方都市からきた。僕は彼女とは、たまたまニュースクール大学付属の英語クラスで出会ったのである。
彼女は34歳になる。