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外国人投資家の視点
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経済・金融
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第3章 米国と中国の狭間の日本株

『外国人投資家の視点』
[著]菊地正俊 [発行]PHP研究所


読了目安時間:51分
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世界の景気敏感株としての日本株


 日本の内需が脆弱である一方、日本の上場企業の海外売上比率は上昇傾向が続いている。海外売上比率を発表している東証1部上場企業の2007年3月期の平均海外売上比率は36%であるが、大手自動車メーカーの海外売上比率は70〜80%にも達する。本来、外国人投資家がみる日本株で最も望ましい状況は、構造改革の進展、内需主導の経済成長、円高などで大型内需株中心に上昇することである。2005年9月の郵政解散総選挙時にはそうした期待が高まった。しかし、その後の内需は当初予想より弱く(外国人投資家の期待が高すぎたという批判もあろうが)、構造改革策は遅れ始め、経済や企業業績の海外依存度が一層高まった。

 1ドル=80円の超円高が進展した1995年に、ドルベースでみた日本の名目GDPは米国の7割水準に達したが、名目成長率の停滞と円安で日本の名目GDPは米国の3分の1に減ってしまった。経済規模、企業収益、株式時価総額など全てにおいて、外国人投資家にとっては、ドルまたはユーロベースでみた数字が目に映る。

 メリルリンチの元チーフ・グローバル・ストラテジストで、現在はAbsolute Strategy Researchという独立系運用調査会社を経営するデビッド・バウワーズ氏は、「日本株は世界景気に対する景気敏感株であり、発展途上国の株式と似た性格をもつ」と述べた。こうした日本株の捉え方は外国人投資家間で広く共有されている。1980年代後半のように日本の内需が極めて強くなり、日本の経済や株式が世界からディカップリングする(別々に動く)という幻想が生まれた時もあったが、今やそうした期待は消失した。日本の経済や株式(特に製造業)の先行きにとっては日本の経済指標より、米国の経済指標が最も重要であり、最近は中国の経済指標の重要性も増している。

 日本株に限らず、株式は将来の景気や企業業績を反映するため、日本株の先行きを考える際には、世界景気の先行指数が重要である。OECD景気先行指数は世界景気の先行指数であり、TOPIXとの相関係数も高いが、発表が遅い(例えば、2007年9月のOECD景気先行指数が発表されたのは11月9日だった)、景気先行指数の1系列に株価指数が含まれるため、株価で株価を説明してしまうという自己矛盾がある。



 メリルリンチが世界の機関投資家に尋ねたファンドマネジャー調査には、今後1年間に世界景気が改善するか悪化するかの質問項目がある。メリルリンチのファンドマネジャー調査は、調査月の第3水曜日に発表されるため、即効性がある。ファンドマネジャー調査の世界経済見通しとTOPIXとの相関係数も高い。TOPIXの先行き予想には、世界の投資家が今後の世界経済をどのように予想するかということに対する予想が必要になることを意味する。

 ピュリツァー賞を3度受賞した著名ジャーナリストであるトーマス・フリードマンが2006年に書いた『フラット化する世界』(日本経済新聞社)は世界的なベストセラーになった。IT技術の発達や企業のグローバル化によって、中国の製造業やインドのソフトウェア産業などが世界経済に組み込まれ、先進国の労働者は発展途上国の労働者との競争の中で、高付加価値の仕事をしないと生き残れないという内容だった。

 2007年には米国人ジャーナリストのサラ・ボンジョーニが書いた『A Year Without “MADE IN CHINA”』(John Wiley & Sons Inc.)が米国で話題になった。世界的に中国製品・食品の安全性が問題になったが、中国製品は世界中の消費者の生活に深く組み込まれているため、中国製品なしの生活は困難との結論だった。先進国の中で、日本は中国に最も近い隣国であり、経済のみならず、軍事や環境面でも中国の影響を受けやすい。日本は今後、長期にわたって、巨大化して世界的に影響力を増す中国に対処していかなければならない。

世界的に高まるアジア株への注目


 アジア経済の高成長が明確でも、アジアの株式市場が未発達のうちは、アジア経済の成長から恩恵を受ける日本企業の株式を買って、間接的にアジアの高成長を享受すべきというという考え方が、外国人投資家間で共有されていた。しかし最近、中国を含むアジアの株式市場の流動性や透明性が高まってきたため、日本株を素通りして、アジア株へ直接投資した方が良いという見方が出てきた。

 最近、外国人投資家と話をすると、アジア経済またはアジア株との関連性で、日本株が議論されることが非常に多くなってきた。政治の世界で、米国政府が日本より中国との外交関係を重視する姿勢をみせると、日本はやきもち的な反発を示すことがあるが、経済や投資の世界では、高い成長や高いリターンを期待できるアジアの国々や市場に注目するのは自然な行動である。

 中国最大の商業銀行である中国工商銀行の株式時価総額は、日本最大の三菱UFJフィナンシャル・グループの2倍以上、携帯電話事業の中国移動(チャイナ・モバイル)の株式時価総額は、NTTドコモの3倍以上に達する。欧米の機関投資家でも日本株だけでなく、他アジア株もあわせて運用する人が増えてきた。欧米の機関投資家が日本に出張してくる際にも、中国に立ち寄る投資家が増え、東京より上海や香港の滞在日数が長い投資家も出てきた。

 日本が長期間にわたって不良債権処理に苦しみ、外国人投資家が日本株に弱気だった頃、「ジャパン・パッシング」(日本を素通り)という言葉が流行(はや)ったことがあるが、現在も、外国人投資家の興味・調査分析の対象が日本から中国へシフトする忌々(いまいま)しき状況である。メリルリンチのファンドマネジャー調査によると、2007年10月に新興国株と日本株の人気の差(ネットで最もオーバーウエイトという投資家比率の差)は35ポイントと、2003年5月以来の大きさに拡大した。日本の個人投資家も、日本株ではなく中国やインド株投信ばかり買っている。内外投資家から、アジア株ではなく、日本株へ投資する意義が問われる時代になった。

 2007年の日本株は世界株が上がる時に上がらずに、下がる時によけいに下がるという嫌な動きになった。日本株式市場は流動性と信頼性が高く、高成長が続くアジア経済へのゲートウェイという位置づけがあったが、8月に入り東京市場の株式時価総額は上海と香港市場の合計に抜かれた(中国には重複上場が多いという問題がある)。

 経済の米国依存度は日本より中国の方が高いが、株式時価総額の上位構成銘柄で中国は内需中心、日本は輸出企業の比率が高いため、世界経済見通しが悪化すると日本株は売られやすい。日本の1980年代後半のように、中国の個人投資家がバリュエーションを気にせずに高値を買うのに対して、日本の個人投資家は下値しか買わないという違いもある。日本の内需が中国のような強さになるとは考えにくいので、日本株反発のためには、米国を中心とした世界経済見通しが明るくなり、輸出関連株中心に日本株が回復するシナリオが最も確からしい。

 多くの大手外国証券会社においても、日本株部門はアジア太平洋株部門の中の一部として扱われており、日本株を特別扱いするのは日系証券会社くらいである。ニューヨーク本社の株式トレーディング・フロアでは、米国株部門が大きな面積を占め、アジア株部門は端の方にあることが多い。ロンドン支店では欧州株のみならず、世界中の株式が取引される。2007年に活況を呈する欧米・アジア株を尻目に、日本株の担当者は肩身の狭い思いをせざるを得なかった。

 外国人投資家と日本株について議論する際に、常にアジアの中の日本という視点が必要になってきた。中国株のPER(株価収益率)は約40倍に達し、バブルの可能性が高いだろう。上海株の急上昇の影響を受けて、香港株のPERも東証を上回ってきたが、韓国など他アジア市場のPERはまだ日本株より低い市場が多い。アジアにはオーナー系企業で、株主の利益と経営者の利益が一致し、文字通りの株主重視の経営を行なっている企業が多い。情報開示は日本企業の方が優れているが、株主重視の経営では、日本企業もアジア企業を見習うべき面がある。


日本の競争相手に成長したアジア


 1970〜80年代に日本がアジア唯一の経済大国になり、日本がリードして経済発展に遅れるアジアを引っ張る雁行(がんこう)型成長が指摘された時代もあった。アジアの経済と企業は、1990年代後半のアジア通貨危機を乗り越えて高成長し、2000年代に入るとアジアや欧米市場で日本と直接競争するようになった。

 日本をはじめとする先進国からの直接投資を受け入れて世界の工場になった中国も、今や外資受け入れを選別し、産業構造の高度化を目指すようになった。サムスンなど韓国の一部の大企業は日本企業を凌ぐ収益を出すようになった。ベトナムなど低労働賃金の豊富な労働力を提供するアジアの国々も依然多い。1人当たり名目GDPでみれば、日本は依然としてアジア1位の先進国であるが、過去10年間、日本の名目GDPの成長が止まっていたため、名目GDP規模でアジアに追い上げられてきた。日本企業の現地生産の増加も寄与し、日本は世界の輸出市場でシェアを低下させた。
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