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(2021/11/26 追記)

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骨抜きにされた日本人
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政治・社会
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八、岩波出版物の「左」展開

『骨抜きにされた日本人』
[著]岡本幸治 [発行]PHP研究所


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 津田論文と『世界』編集部の期待

 これまで、敗戦後の時流に乗り、水を得た魚のように活躍した「進歩的文化人」の何人かについて取り上げてきたが、彼らに進んで活躍の場を提供したマスメディアがどのようなものであったかを、具体例で検討することとしよう。知識人に十分な紙面を提供していいたいことを主張させたマスコミの代表は、総合雑誌である。先に問題とした丸山真男が論壇の寵児となるきっかけをつくったのも、そのような雑誌の一つ『世界』であった。『世界』は、岩波文庫、岩波新書、岩波全書などによって戦前すでに裾野の広い知的読者層を獲得していた岩波書店が、敗戦後新たに発行した総合雑誌であり、やがて日本の知的階層に大きな影響力をもつようになったのであるが、それがどのような性格のものかを知るうえで、たいへん興味深い事件があった。

 この雑誌の創刊第四号(昭和二十一年四月刊)に歴史家津田左右吉の論文が掲載されたが、編集者がこの論文を掲載するに至った経過を、わざわざ詳細にわたって説明し、釈明するという異例の文章が同時に掲載された。論文を依頼したのは編集長吉野源三郎である。自分で依頼した原稿についてわざわざ説明文を書くというのも異例なら、それがじつに三段組八頁の長文であり、独立した論文のような扱いになっているというのが前例のないことであった。この異例ずくめの文章がなぜ掲載される必要があったか……その背後には、占領初期の知的雰囲気を知るのに見逃すことができない一つの物語があったのだ。

 津田の論文は「建国の事情と万世一系の思想」と題されていた。中身は、当時かしましい論議の対象となっていた天皇問題について、「実証史学のチャンピオン」であった津田の見解を聞こうとしたものである。津田は戦前に岩波書店から刊行された『神代史の研究』など三冊の実証的な国史研究によって高い評価を与えられたが、皇国主義史観が力を得て政治的影響力をもち、軍国主義的風潮の高まった昭和十五年に、出版法違反に問われ、執行猶予つきながら禁固三カ月の判決を受けた(後に免訴)。
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