ルターによる教皇権への抗議
中世をおおった死の暗雲とはおよそ対照的ともいえる、生の光を謳歌するルネサンスが、十五世紀から十六世紀にかけての西ヨーロッパに拡大していた。
古代ギリシア、ローマ文化の復興という、いわば中世の苦悶をはらいのけようとするかのような精神運動は、商業資本の興隆による都市の発達を背景に各地へ躍動して行く。古代西ローマ帝国の崩壊とともに失われ、忘れられていた古代ギリシア・ローマの文化が、「再生」を意味するルネサンスによって再現されようとしたのである。
人間性と理性の尊重に促され、ヨーロッパ近代精神を導く力ともなった、多様な分野にわたる文化的活動は、早くから商業都市の発展の見られたイタリアを中心に起こる。
イタリア初期ルネサンスを象徴するボッティチェリの「春」や「ヴィーナス誕生」といった、神話的光の世界。さらに最盛期にはレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ラファエロなどを輩出したルネサンスは、あらゆる分野におよんで危機に直面していた十四世紀から十五世紀にかけての暗黒の時代からの回復を示していた。