ムハンマドの異常体験
イスラーム(この言葉自体がイスラム教を意味する)を説いた預言者ムハンマド(五七〇─六三二)は、『旧約』に登場するアダムをはじめノアやアブラハム、モーセ、ダビデさらに『新約』の主役イエスなど、二八人にのぼる預言者の系列において〈最後の預言者〉に位置づけられている。しかもイスラームでは、この預言者の系譜のなかで、ムハンマドがもっとも優れた預言者とされ、彼以後の預言者はいっさい認めていない。
「神の使徒」あるいは「預言者」「警告者」ともよばれるこのムハンマドに、神から下されたとされる啓示を彼が語り、それを身近にいた人々が記憶し、第三代カリフ(最高権威者。在位六四四─六五六)のとき、それらを集録したものが『コーラン』であった。