呼びさまされた民族意識
広く乾燥した砂漠地帯に囲まれた商業都市に生まれ、急速に信徒を増やし、その勢力を拡大していったイスラームは、ムハンマドの最晩年にはアラビア半島をおおい、その勢いは彼の死後間もないうちに、地中海文明圏へとおよんでいた。
生まれや身分、部族、民族のちがいを超えて、アッラーを唯一神と認める者は誰もが、神の前に平等であるという教えは、富の極端な偏りや宗教的な因襲にしばられた人々にとって新たな救いの原理として響いたにちがいない。
三九五年に東西に分裂して以来、コンスタンティノープルを都として栄えた東ローマ帝国は、一四五三年にイスラームをかかげるオスマン帝国によって滅ぼされていた。