大国の介入で呼びさまされた部族意識
世界の多くが支援を約束し、暫定政権の誕生を見て二年余をすぎてなお、アフガニスタンには、部族・民族の思惑を超えた統一された国家の姿が見えてこない。
だがこれは、必ずしもイスラームという宗教そのものに原因することではないだろう。ここには歴史的に形成された部族社会というまとまりが、旧ソ連やアメリカといった大国が介入したことをきっかけとして、より狭い部族意識を呼びさましてしまったという、新たな悲劇が根本にある。
紀元前の時代から文明の十字路として、ガンダーラ仏教文化の一角を占め、交易の要衝を占めてもいたアフガニスタン。その三千年余の歴史を秘めた国に、少なくとも近世以降の大国の介入によって生まれた、ねじ曲げられた部族意識の対立がさらけだされているのである。
大英帝国がインドを領有・支配していた十九世紀。