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パティシエ世界一 東京自由が丘「モンサンクレール」の厨房から
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ルポ・エッセイ
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I ショートケーキ

『パティシエ世界一 東京自由が丘「モンサンクレール」の厨房から』
[著]辻口博啓 [著] 浅妻千映子 [発行]PHP研究所


読了目安時間:17分
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皿まで舐めたショートケーキの衝撃



 今日は定番ケーキの話をしましょう。日本人にとって定番といえば、ショートケーキとシュークリーム、あとプリンとモンブランかな。どれも、大人から子供までなじみがあるケーキですよね。僕にとってもそうです。特にショートケーキには、僕がこの道に入ることになったきっかけともいえるような思い出がある。今日はその話をしましょうか。


 ショートケーキは、僕が最初に食べたケーキです。小学校のとき、友達の誕生日会に呼ばれ、そこでたらふくご()(そう)をいただいたあと最後に出てきた。僕は和菓子屋の息子だから、和菓子だったらいくらでも食べたことはありました。でも、ケーキを食べたのはそれがはじめてだったんですね。あまりの()()しさにひっくり返りそうでしたよ。お(ぎよう)()わるいと思いつつ、生クリームのついたお皿まできれーいに()めちゃったほどです。


 お皿を舐めながら、ふと上斜め四五度に後ろを振り返ったら、その友達のお母さんが立っていた。そして「辻口君のところにはこんな美味しいものはないでしょう」って言われたんです。そのお母さんにしてみれば、僕のうちが和菓子屋だからというだけで、意地悪で言ったわけでもないんですが、「(くや)しいけど、たしかにうちにはこんなに(うま)いものはない」と思いましたよ。


 うちの大福と比べても、こっちのほうが旨い。というか、こんなとろける舌触りのお菓子はじめてだったんです。単純ですが、それで、「よし、今にみてろ、将来はこういうものを作ってやる」という気持ちになりました。


 振り返れば、あれからはや二〇年、いや二五年近くが経っています。それでは、さっそく今店で出している「フレーズ」という名のショートケーキを食べてみてください。はい、これです。


 形が四角いのはなぜかというと、オリジナリティーを少しでも出すため。三角形にはしたくなかった。え? やけにスポンジ部分が黄色いですか? そうなんです、これが一番の特徴。ふつうスポンジは全卵で作りますが、うちのは卵黄の量を増やしているんです。そうすると、口どけがよくなる。(らん)(ぱく)の多い()()には別の美味しさがあります。でも、僕がショートケーキに求めたのはこの「口どけのよさ」。だからこういう作り方にしました。


 食べて、どうですか。口あたりが優しい? スポンジから卵の風味がしますか。生クリームは軽いけれど、カスタードクリームが程よいコク? そう、生クリームは乳脂肪分三八パーセントで、これは直接生クリームを食べるケーキに使うには、かなり軽いものです。乳脂肪分が高すぎるものを使うと、たしかに出来立ては風味もよくて美味しいけど、家に持って帰り冷蔵庫に入れて食べる段になると、固まって口どけが悪くなっている。


 軽いクリームを使うかわりに、コクを出しているのがクレームパティシエール。カスタードクリームのことですね。これをスポンジとスポンジの間に薄く敷くことで、軽さだけで終わらない、このケーキ独自の存在感が出てきます。

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