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パティシエ世界一 東京自由が丘「モンサンクレール」の厨房から
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ルポ・エッセイ
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VII モンサンクレールの栗

『パティシエ世界一 東京自由が丘「モンサンクレール」の厨房から』
[著]辻口博啓 [著] 浅妻千映子 [発行]PHP研究所


読了目安時間:16分
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進化した二代目「モンサンクレールの栗」



 あなたが店の中で一番気になるお菓子ってどれですか? 「モンサンクレールの栗」ですか。店名がついているから、思い入れも強いんでしょうって? そう、たしかに僕にとって思い入れの強いお菓子です。


 あ、ちょうど温かいお茶も来たので、是非「モンサンクレールの栗」食べてください。この「モンサンクレールの栗」、オープン当初からあります。


 まずは栗との出会いについてお話ししましょうか。以前この店のスポンサーだった女性との会話の中で、愛媛県の「中山の栗」というのがよく出てきていたんです。それがずっと気になっており、あるとき取り寄せてみたところ、びっくりするほど大きな栗だった。食べたら味もいい。なんでも、江戸時代は徳川幕府に(けん)(じよう)されていたらしいと聞きました。それも納得できるほど立派な栗でしたね。


 それで(しぶ)(かわ)()を作り、パイで包んで焼くお菓子を思いついたんだけど、やってみたら、栗の下処理に信じられないほど手間がかかった。一つ一つ皮を()き、()()抜きして、じっくり渋皮煮を作って……。


 一つのお菓子にこれほど時間を取られるなんて考えられないほどです。試作段階で、ここまで時間もかけ、気合いを入れて作るんだから、店名を冠につけようということで、「モンサンクレールの栗」になりました。実際商品にしてからは一日何百個という単位で、爆発的に売れました。おかげで、毎晩夜中の三時まで、厨房で一人ひとつひとつ栗を剥いて、渋皮煮を作ってましたね。


 ワンシーズンは、本当に、ほとんど徹夜で頑張りました。でも限界でした。さすがに他のお菓子に力がまわらなくなりそうになってしまった。この栗のために他のお菓子すべてが犠牲になるのはよくないと思いましたね。


 そこで、ますますお客さんも増えた翌年、このお菓子についてじっくりと考えてみたんです──やめるべきか、続けるべきかを。


 結果、国産で、現地で渋皮煮までしてくれる栗を探してみました。めぐり会ったのが今使っている栗。残念ながらサイズは中山町のものより小ぶりなんですが、味はいい。これなら、あのお菓子を続けられると思いました。


 たしかに栗だけを取れば、中山町のものにはかなわない。でもね、そのぶん真剣に、「モンサンクレールの栗」という一つの商品としての完成度の高さを目指しました。商品名に恥じない進化をさせたんです。今のほうが、全体の味としては上ですよ。



 具体的にいうと、まず工夫したのは、パイで包む方法です。中山の栗を使っているころは、継ぎ目が下にきていたんです。だから、見た目はつるんとしてきれいなんだけれど、食べるとその部分だけちょっと「重い」感じになっていたんですね。


 そこで栗を変えてからは、思い切って継ぎ目を上にもってきた。

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