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ここでちょっと、僕自身の幸福の履歴書について語っておかなければならないだろう。
僕は、四十代でマンガ家としてヒット作を描き、世間的にもそれなりの評価を得ることができたが、それ以前の二十代から三十代にかけては、心の底から、
「ああ、幸せやなぁ」
と、感じたことは一度もなかった。
もちろん、生きているのだから、それなりの楽しみはあった。パチンコで勝ったときや、日曜日に小林旭の『渡り鳥シリーズ』を三本立てで見たときなんかは、たしかに興奮もしたし、楽しくも感じた。
けど、日々の労働はつらかった。
さっきも書いたように、そのころの僕は、水商売の世界にいた。